ポーランドの映画ポスター

 引き続き26日木曜日に行った展覧会の記録。三井記念美術館で展示を見終った後、大雑把な方向だけ定めて国立映画アーカイブへと歩いて行った。曲る場所に少し迷いもしたが、道中のあちこちにあった近隣地図に救われた。新宿とか渋谷にこそこういう物はあればいい。7階へとエレベーターで昇り、ぐるっとパスを見せて展示室へ入館。

 

 

 今回の目的は常設展示ではなく、企画展である「ポーランド映画のポスター」だけなので常設展示コーナーは全てスキップ。以前来た時にじっくり見て、興味深い物は写真に撮ったが、ここの常設展示は情報密度が濃いので何度か来てもいいかもしれない。常設展示の最後にある企画展示コーナーにあっさりと到着。

 

 第1章は「ポーランド映画のポスター」。1950年代後半に台頭したイェジ・カヴァレロヴィチやアンジェイ・ムンクアンジェイ・ワイダといった若手映画監督はポーランド派と呼ばれたが、1960年代に活躍したグラフィックデザイナーも同じくポーランド派と呼ばれ、彼らによるポスター作品が展示されていた。印象に残ったポスターを挙げていく。文字だけで画像が無く、古文書のような雰囲気を醸し出す『尼僧ヨアンナ』。3名の登場人物を湖の魚として太い線で大胆に表現した『水の中のナイフ』。煉瓦の壁に上半身が浮かび上がった女性が描かれ、その左側に植物の蔓が這い回り、右側に水の渦が巻いている『家族生活』。頭蓋骨の顔が眼球となったような『砂時計』。人の頭部のような場所の外周にに嘴を持った生物がおり、大小の円が連なる『イルミネーション』。『家族生活』、『砂時計』、『イルミネーション』の3つは連続して展示されていて度肝を抜かれた。そして、『ダントン』。人の胸元から盛り上がってきた赤い手がその人の顔を鷲掴みにしているというポスター。映画として知っている物は映画に詳しくないのもあってあまりないが、映画ポスターとして目に焼きついた物はいくつも産まれた。

 

 第2章は「日本映画のポスター」。ポーランドのデザイナーによってデザインされた日本映画のポスターであり、当時の日本のポスターが展示されていたわけではない。同じく印象に残った物を。日の丸が浮かび、縦横線がいくつか配された意匠に、左に握られた銃、右に握られた刀を描いたスタイリッシュなデザインの『用心棒』。五輪の真ん中の円が大きな日の丸となり、その下に「OLIMPIADA W TOKYO」と記された『東京オリンピック』。棒人間が棒人間を持ち上げる姿をデザインした『姿三四郎』。真っ黒の地に、日の丸を頬に描かれた女性の横顔が暗い水に浮かぶ『日本沈没』。おもちゃみたいな新幹線が描かれた『新幹線大爆破』。逃げる人が大きく描かれ、背景ではメカゴジラがビームを放つ姿が小さく描かれた『メカゴジラの逆襲』。特に印象に残ったのは『姿三四郎』か。なるほどとちょっと思ってしまった。

 

 第3章は「世界各国のポスター」。ポーランドにおける映画ポスターは、製作国のプロダクションが映画宣伝に介入できなかったことにより、実験的で多彩な物が産まれたとのこと。割かし好き勝手やれる環境があったと。最後となったこの第3章ではヨーロッパやアメリカ映画など世界中の映画のポスターの展示。真っ赤な地に、巨大な黒い椅子とそこに座る小さな人物を描いた『就職』のポスターが、あらすじの説明と噛み合っていて良いなと感じた。この展覧会の宣伝チラシにも使われた、ボタンに綴じられた服が顔となっている『暗殺の森』のポスターや、男性の顔の上半分が積み重なって一匹の虫となるデザインの『醜い奴、汚い奴、悪い奴』が印象的。特に後者の何とも言い難い不快感が湧きあがってくるデザインは、タイトルからしてよく出来ている。最後の方で見覚えのあるポスターを1枚見つけた。『ノスタルジア』のポスター。デザインを手掛けた人物を見て、既視感の理由がわかった。武蔵野美術大学美術館で展覧会を見たスタシス・エイドリゲヴィチウスのデザインだ。こんな所でこんなすぐに再開するとは。

 

 こういうのは文字でとやかく言うより見に行くのが一番で、会期も3月までとまだ時間があるので是非見に行ってほしい。ぐるっとパスを使わずとも入館料は安い。1月28日から後期展示として一部のポスターが入れ替わるそうなので、再訪しようかと考えている。

 

 

 これで木曜日に回った展示は終わり、2ヶ月のぐるっとパスライフも終焉を迎えた。ぐるっとパスで割り引かれたり無料となった入館料はしめて7850円。使い潰せたとは決して言えはしないが、最低限以上に元を取れたのは良かったか。