5月のまとめ

5月に行った展覧会のまとめ

 

奈良県立美術館 小川晴暘と飛鳥園 100年の旅
大阪大谷大学博物館 大とんだばやし展―埋文調査の歩みとこれから―
大阪髙島屋 伊藤彩展「ゲノムの詩-Collaboration with Fujimura Family」
大阪髙島屋 工芸の美-第53回日本伝統工芸近畿展出品者選抜展-
大阪髙島屋 -光彩讃美-並木秀俊展
大阪府中之島図書館 ようこそ!世界の紙芝居の森へ~We love KAMISHIBAI!
阪神梅田本店 中村エイト画集出版記念イラスト展「EVOLUTION」OSAKA
阪神梅田本店 チェリ子初個展「bouquet」
大丸梅田店 ブレイク前夜展2024 in OSAKA
グランフロント大阪 Voices of the Lake
関西大学博物館 花開く大阪の文化
阪神梅田本店 山上學陶展-帆-
阪神梅田本店 やすらぎの沖縄 北島清隆写真展
阪神梅田本店 オキナワアート&ファッション「イチグスクモード」池城安武作品展
阪神梅田本店 岡田章子水彩画展-珊瑚礁の海へ-
あべのハルカス美術館 徳川美術館展 尾張徳川家の至宝
髙島屋史料館 「人間 栖鳳」 生誕160年 知られざる竹内栖鳳
大阪大学中之島芸術センター 糸川燿史写真展「回顧録
大阪歴史博物館 ―わたしが難波橋のライオン像をつくりました!!― なにわの彫刻家・ 天岡均一没後100年記念展
大阪歴史博物館 おおさか街あるき―キタ・ミナミ―

 

 

月の最後の日曜日、大阪歴史博物館へ行った。エンジョイエコカードの割引料金でチケットを購入し、まずは特集展示の天岡均一展へ。難波橋のライオン像の製作者である彫刻家を取り上げた展示で、天岡均一の来歴から始まり、彫刻作品の展示、彼の妻で近代大阪の女性工芸家である蕗香に関する展示、ライオン像の話と来て、俳人としての一面が窺える資料の展示で終わる。中之島の東側は中央公会堂や東洋陶磁美術館までしか行かないためライオン像を見た記憶が薄く、前提となるライオン像にピンと来なかったが動物彫刻を楽しんだ。イケフェスで大阪取引所に行った時に見たと思うが。芸術家としての顔が見えるエピソードも随所にあり、中之島にあった豊国神社の豊臣秀吉像を拙くて大阪の恥だと発憤して乗馬像を作った話は面白かった。今は大阪城で目にするあの豊臣秀吉像だろう。

2つ下の階に降りて今回の目的である「おおさか街あるき」展へ。大阪の繁華街であるキタとミナミの歴史資料を街歩きするように見ていく展示。街歩きマップを配布し、それぞれの資料の解説文では最寄り駅や次の地点までの距離が記され、展示を見た後に実際に街中を歩いて回れるようになっている。常設展では大阪の歴史という大枠で話が進むため、企画展として個々のスポットを取り上げてくれるのは、より歴史に馴染みやすくて良い。キタとミナミの類似点と相違点の紹介、キタ、街歩きアイテム、ミナミ、大阪歴博周辺の街歩きの大きく5つにセクションが分かれていて、前3つと後ろ2つでそれぞれ展示室が分かれている。キタとミナミで展示室が変わることで、展示物から感じる街の空気が変わるのが印象的だった。どちらも、江戸期まではその先に何も無い街外れにあって、明治期にかけて周辺を街中に取り込んでいき、明治の終わりに大火にあって街の姿が一変する。今では梅田地域として捉えてしまうお初天神が、地図を見ると村外れだったことを知り、なるほど曾根崎心中の頃は静かに最期を迎えるような場所だったのだなと納得した。展示全体としては、そこに人がいるかのような生人形が衝撃的で、芸術や芸能に関する資料が多かったミナミが見ていて面白かった。ぐるっと周って最後の大阪歴史博物館周辺街歩きのセクションで、ある建造物の解説文が目に留まった。大阪歴史博物館の窓からも見える教育塔。なぜ教育塔と呼ぶのだろうとずっと疑問に思っていたが、室戸台風で犠牲となった教育関係者や児童の慰霊を目的に建てられたことをようやく知った。普段は行きたい展覧会から展示施設を鉄道で周るルートを組んで移動しているが、歩き回るルートを組んでもいいかもしれないと思えた一日だった。

 

 

5月に読んだ本のまとめ

 

アサウラリコリス・リコイル Recovery days』
すめらぎひよこ『我が焔炎にひれ伏せ世界』2巻
ガブリエル・ゼヴィン『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』
二月公『声優ラジオのウラオモテ』10巻
村雲菜月『コレクターズ・ハイ』

大木毅『歴史・戦史・現代史 実証主義に依拠して』
島村恭則編『現代民俗学入門 身近な風習の秘密を解き明かす』
宮田珠己『路上のセンス・オブ・ワンダーと遥かなるそこらへんの旅』
明治大学商学部編『アート・オブ・物流 進化する物流世界の実像』
山口進『昆虫カメラマン、秘境食を味わう 人は何を食べてきたか』
山本輝太郎、石川幹人『科学がつきとめた疑似科学 「科学リテラシー」で賢く生き延びる』

 

 

葛飾北斎の波をバックに、タイトルと作者名と訳者名がゲームのメッセージウィンドウのように配置されている。5行に渡って連なるタイトルはドット文字になっていて、よりゲームらしさが際立つ。そんな表紙デザインに惹かれ、月の後半で一気に読んだ『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』が面白かった。幼い頃に病院で出会ってゲームを通して仲良くなった2人が大学生になって再会し、ゲームを共同開発して大きな成功を収めるも、行き違いや対立から溝が深まっていき……というあらすじ。90年代に『イチゴ』というゲームを大ヒットさせる所から物語が転がっていくが、作中で生まれるゲームの他にも現実で発売されたゲームも数多く登場し、青春時代を過ごしたゲームの一時代史としても興味深かった。アメリカが舞台なので知らないゲームも結構あったが。悲劇的な物語があって販促で前に出る共同開発者のため、影が薄くなって自らの作品と世間的に評価されないもう一人の開発者。クリエイターとしてぶつかりあう2人の間を取り持ち、諸事うまく回していくプロデューサーの大事さ。身体障害と人種とジェンダーが異なり重なる人々の視点と思想の違い。そして、冒頭に掲げられるエミリー・ディキンソンの詩「愛こそすべて」。長編ながら読みやすく、色々感じては書けずに忘れてしまったことも多い。読み終えたらゲームをガッツリ時間を取ってプレイしたくなった。