6月のまとめ

6月に行った展覧会のまとめ

 

御殿山生涯学習美術センター 「大阪美術学校創立100年記念」 開校記念展
京都市立芸術大学芸術資料館 「日本最初京都画学校」-京都御苑からの出発-
京都市立芸術大学アートスペースk.kaneshiro 源平合戦図屛風ー其の壱 いざ参らん、一の谷の戦いへ!
京都蔦屋書店 コケシスキー個展「時間と積層 -Time and Deposition-」
京都蔦屋書店 熊野海個展「MAGICAL UNIVERSE
京都蔦屋書店 やまなかともろう 個展「金色掻き分け流るる乙女」
京都蔦屋書店 長嶋祐成「川」展
京都蔦屋書店 ミシオ個展「星座と/は違う/手(サースカムスタンス)」
大阪髙島屋 写真家 砺波 周平×HIDA~森の声をきく~
大阪髙島屋 小島久典展 Flumen Temporis~時の河
髙島屋史料館 「人間 栖鳳」 生誕160年 知られざる竹内栖鳳
大丸梅田店 Upcoming Artists
大丸梅田店 岡本太郎コレクション展
阪急うめだ本店 Osaka Art & Design 2024「『阪急×Art Collectors’』アートフェア2024」
阪急うめだ本店 Osaka Art & Design 2024「ヘラルボニーアートコレクション」
心斎橋PARCO ART SHINSAIBASHI
大阪企業家ミュージアム 企業家たちの珠玉の名言とゆかりの品
適塾

 

 

行ったことの無い場所でやや興味の惹かれる展覧会が開催されることを知り、おそらく人生初の京阪電車に乗って枚方市の御殿山まで行ってきた。駅を出て踏切を渡ると緩い上り坂で、少し歩いて生涯学習美術センターはこちらという看板を見つけて左折するとさらなる急坂で、入口に辿り着く頃には息が切れていた。後でアクセス情報を確認したら、急な坂道だけど近道をしたい方向けのルートだったらしい。目的の展覧会は大阪美術学校創立100周年記念展で、施設受付前のちょっとしたギャラリースペースで関係者の写真や絵画作品が展示されていた。恥ずかしながら大阪美術学校は存在すら知らず、設立に中心的な役割を果たした矢野橋村も名前しか知らなくて、ちょっと前に池田市の歴史資料館で矢野橋村展をやっていたなあ、行けばよかったと少し後悔しながら作品を見た。個々の作品よりも、大阪美術学校設立にあたって矢野橋村が述べた言葉の中にあった、「大阪と言ふ處は美術家を殺しこそすれ育てる處ではない」と人々の間で言われるようになり、そう感じた芸術家が大阪から次々に離れて美術畑が荒廃していたという状況に、近年の色々なニュースを思い出して悲しくなった。展示を変えて別会期の展覧会が続くらしい。

京阪電車で京都に向かい七条駅で降りて京都市立芸術大学芸術資料館へ。道中で石清水八幡宮京都競馬場京阪電車の沿線にあること知る。京都競馬場淀駅を通過する時に大きな施設やコースが車窓から見え、昔行った東京競馬場を思い出して気分が盛り上がっていた。京都市芸大では移転記念特別展「京都芸大<はじめて>物語」2期目を鑑賞。今回は美術教育用の絵手本や参考資料に使われた中国絵画などが展示されていた。日本初の公立美術学校として京都府画学校が設立されるに当たり、幸野楳嶺が絵画は図面を描くのに有用で諸産業の基本だと設立意義をアピールしていた所に、当時の美術に対する世間の眼と実学への志向が窺えて面白かった。時代の下った大阪美術学校の設立への思いを読んだ後で見ると、美術というか画家についての社会の見方の変化を感じる。展示を見た後は6階のアートスペースで源平合戦図屏風を見て、京都髙島屋まで歩き、蔦屋書店の展示をぐるっと周って一日が終わった。

 

 

6月に読んだ本のまとめ

 

伊良刹那『海を覗く』
八目迷『小説葬送のフリーレン~前奏~』

青木耕平、加藤有佳織、佐々木楓、里内克巳、日野原慶、藤井光、矢倉喬士、吉田恭子『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』
奥野克巳監修『世界ぐるぐる怪異紀行 どうして”わからないもの”はこわいの?』
尾崎俊介アメリカは自己啓発本でできている ベストセラーからひもとく』
後藤さおり『日本のミュージアムを旅する』
篠田謙一『科博と科学 地球の宝を守る』
谷口功一『日本の水商売 法哲学者、夜の街を歩く』
田豊隆『妻はサバイバー』
町田明広編『幕末維新史への招待』

アイナール・トゥルコウスキィ『おそろし山』

 

 

TLに流れてきた「アメリカ文学・文化について考えるための読書・動画ガイド」を読み、アメリカ文学の最新動向を知りたくて『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』を読んだ*1。2020年刊行でここ数年の情勢は当然無いものの、8人の執筆者がそれぞれの関心に沿って割と好きに近年の作品を紹介していく本で、最後には柴田元幸も交えた座談会が収録されている。必ずしも小説ばかりではなく、ドラマやグラフィックノベル、作家ワークショップの体験談に文芸翻訳と射程は幅広く、新たな作品を知るだけにとどまらず、今のアメリカ社会で問題とされ議論されていることが伝わってきて、どの記事も面白かった。インドで起きた2つの爆弾テロ事件を下敷きに、生き残ったテロ被害者がテロ幇助者に、子を失ったリベラルな母親が死刑支持者に変わるなど、テロが人をいかに変えていくかを描いたカラン・マハジャン『小さな爆弾たちの連合』。順調な来歴の人生を歩むも、既に確定した絶望から「よくなる」ことを期待せず、最後まで救いの訪れない男を描くハニャ・ヤナギハラ『あるささやかな人生』。当事者によって執筆され、トランス女性の直面する生活上の問題が散りばめられたメレディス・ルッソ『If I Was Your Girl』。他にも興味が湧いて読みたくなった小説はあったが、挙げた3作品も含めて邦訳が刊行されていない物が結構あった。英語ででもどうにか読みたいなと思ったものの、ハニャ・ヤナギハラの『A Little Life』(上記の『あるささやかな人生』)が700ページ超えなのを知って尻込みしてしまった。とりあえず、同作者で邦訳のある『森の人々』を読むつもりだ。

*1:冨塚亮平researchmap
https://researchmap.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/295568/3f01747097d167382db05220a8cbfaf9?frame_id=656319
「これから人文科学について学ぶ人のための読書・動画ガイド」も公開されている