7月に行った展覧会のまとめ
京都工芸繊維大学美術工芸資料館 博覧会展―博覧会を楽しむ20のエピソード
大谷大学博物館 教科書の素材
中信美術館 伊部京子展 和紙物語
京都文化博物館 日本の巨大ロボット群像−鉄人28号、ガンダム、ロボットアニメの浪漫−
京都文化博物館 祇園祭-山鉾巡行の歴史と文化
京都文化博物館 天平の都 恭仁宮 最新の発掘調査成果から
芦屋市立美術博物館 創立100周年記念 信濃橋洋画研究所―大阪にひとつ美術の花が咲く―
芦屋市立美術博物館 令和5年度芦屋市内遺跡発掘調査速報展
芦屋市谷崎潤一郎記念館 文豪の愛着~谷崎が愛した小物たち~
芦屋市谷崎潤一郎記念館 林理恵 陶展~蓮のある風景~
兵庫県立美術館 描く人、安彦良和
兵庫県立美術館 コレクション展Ⅰ
京都府立京都学・歴彩館 スポットライト-今、ミュージアムが光を当てたい逸品展-
千總ギャラリー ためつすがめつ屏風
千總ギャラリー あなたと絵の話、交差点 (The only thing I did)
建仁寺 生誕100年記念 小泉淳作展
京都蔦屋書店 橋爪悠也個展「LISTEN TO THE SONG OF COLORS -色の歌を聴け-」
京都蔦屋書店 X Beyond O2O2V
京都蔦屋書店 小澤香奈子個展「しろくゆらす」
京都蔦屋書店 隗楠個展「Exploring」
京都蔦屋書店 粂原愛個展「静寂の聲」
京都蔦屋書店 小島拓朗個展「evokes」
国立文楽劇場資料展示室 文楽で学ぶ なまずと西遊記
髙島屋史料館 富岡鉄斎「贈君百扇」ー君に百扇を贈るー
大阪中之島美術館 滑らかなオントロジーと共鳴するオブジェクト:物化する計算機自然・微分可能存在論における密教世界
大阪大学中之島芸術センター 天然表現「投錨するアート」展
阪神梅田本店 楽園~Paradise Garden
阪神梅田本店 ~高精彩で魅せるイラスト展~ エール!イラストレーターズ 2024 OSAKA ステージⅡ
告知されてからずっと楽しみにしていた巨大ロボット群像展に行った。昨年9月の福岡市美術館から横須賀美術館、高松市美術館と巡回し、ようやく関西の京都文化博物館へ回って来た。京都工芸繊維大学の博覧会展に行きたかったので、京都市営地下鉄の一日乗車券を有効活用できるルートを考え、まず博覧会展に行き、南下しつつ数ヶ所巡って最後に巨大ロボット群像展を見ることに。初めて訪れた中信美術館の道中、たまたま見学日だった京都府庁旧本館で旧議場や旧知事室といった建築を楽しみ、京都文化博物館に辿り着いたのは15時半頃。会期初日で混雑して展示を満足に見られない可能性を危惧していたが、時間帯もあってか困る程には混んでいなくて安心した。
お台場の実物大ガンダムをはじめとする、巨大ロボットを実際に建造したプロジェクトの映像から展示は始まった。最初の展示エリアは鉄人28号のメディアミックス史。原作マンガに始まり、アニメに先駆ける実写ドラマ版、テレビアニメ3作品に劇場アニメに実写映画まで、解説の記された柱が立ち並ぶ。全然世代でも無いのにこの段階で気分は一気に高まり、次のエリアのマジンガーZの詳細な解説パネルを見てわくわくしていた。光子力研究所の断面図にパイルダーオンしてマジンガーZとなる過程、作劇上の合理性の紹介と、マジンガー関係なくロボット作品として説明を読むのが楽しかった。鋼鉄ジーグにコン・バトラーV、勇者ライディーン、ゲッターロボと、最初期のロボットアニメ作品の解説が続く。マジンガーレベルに気合が入った解説をされている作品は他に無くて少し残念。ぐるっと回ってスタジオぬえのコーナーへ。ゼロテスターや、有名シリーズとなったマクロスの展示の後、ハインラインのSF小説『宇宙の戦士』に登場する機動歩兵のイラストが展示されていた。スタジオぬえの宮武一貴と加藤直之によるこの機動歩兵は、原書に無いパワードスーツのデザインで後のアニメやマンガに大きな影響を与えたらしい。パワードスーツのサイズ感を体感できるちょっとした展示もあり、ただのロボットアニメ列挙に終わらない展示を見られたのは嬉しかった。最初期ロボットアニメ作品が切り開いた想像性と合理性に焦点を当てたエリアの後は、ロボット作品の実際のサイズを体感できる展示が続く。ルパン三世に登場した巨大ロボットのラムダ、ダグラム、ボトムズ、ザブングル、メガゾーン23と、作中ロボットのサイズを再現したパネルが展示され、大きさをある程度イメージできる。数十メートル級のいわゆるスーパーロボットはわからないものの、比較的小さめのロボットは大体これぐらいのサイズかと想像して面白かったが、展示スペースの問題か、立った姿で大きさを実感できる機体があまり無くて残念だった。次は精緻に描かれるようになっていったロボットの内部機構に関する展示。プラモデルやおもちゃが展開されていく中で機体の内部機構を解釈してデザインするようになっていき、アニメでも合体シーンを描く中で内部機構が見せられるようになっていく。トップをねらえ!や勇者シリーズの合体シーンをいくつも繋げた映像を鑑賞できるスペースがあり、やはりロボットの合体シーンは良いなと思いつつ、アニメーターの苦労が偲ばれた。
下の階に降りる。この巡回展の目玉である、18mのガンダムが床に描かれ、その大きさを感じられる部屋に来た。元々の展示構成ではスタジオぬえエリアの次にこの部屋が来るはずだったが、会場の都合でそうもいかずに別の階になったらしい。この展示スペースを確保するため、会場の広さを考慮して展示構成をどうにかしなければならないのも大変だ。床のイラストを見せる都合上、デカい部屋が必要な一方で壁側にしか展示を置けないし。見た目のインパクトはあるものの、大きさのイメージはできるそうであまりピンと来なかった。ガンダムの初期設定画からのデザインの変遷と、セルアニメとしていかにリアリティを追求したかの展示を見て、最後にあったのは90年代ロボットアニメのコーナー。現実離れしたデザインながら機体設定が練られ、個性的な物語を紡いだ、ジャイアントロボ、ガオガイガー、ビッグオー、ゲキ・ガンガー3、ダイ・ガードの5作品の展示。ナデシコだ、やっと観たことのある作品が来たと思ったら、作中作のゲキ・ガンガー3の話しかしていなくて笑ってしまった。ジャイアントロボはアニメ映像が流され、実際にロボットが動いて戦っている所を観られたのが良かった。会場の動線など色々な課題はあると思うが、「巨大ロボットとは何か?」というテーマからしても、もっと色々な作品のロボットが動いている場面が見たかったところ。映像カットだけではどうしても限界がある。どの辺りの時代まで展示されているのだろうと思ったら、90年代で終わって消化不良気味なのも少し残念。展示の中で一番新しい作品は2012年公開の『花の詩女 ゴティックメード』か?不満はあるものの、ロボットアニメに関する展示をこれだけ観られたのは間違いなく楽しかった。古典と言える昭和のロボットアニメを観てみたくなった。
7月に読んだ本のまとめ
白鳥士郎『りゅうおうのおしごと!』19巻
豊永浩平『月ぬ走いや、馬ぬ走い』
二月公『声優ラジオのウラオモテ』11巻
二月公『声優ラジオのウラオモテ DJCD』
八目迷『ミモザの告白』5巻
原田マハ『板上に咲く』
大澤夏美『ミュージアムと生きていく』
奥野武範『常設展へ行こう!』
国立科学博物館筑波実験植物園編著『植物園へようこそ』
鈴木均『自動車の世界史 T型フォードからEV、自動運転まで』
原田裕規『とるにたらない美術 ラッセン、心霊写真、レンダリング・ポルノ』
藤木和子『「障害」ある人の「きょうだい」としての私』
学芸員に常設展の魅力を聞いてみた『常設展へ行こう!』が良かった。東京国立博物館に始まり、国内の12の美術館について各館の学芸員が収蔵作品への愛を語っていく。四六判の2段組で数十ページに渡って設立経緯やコレクション方針、オススメ作品が語られ、インタビュー形式なのもあってそこそこの文量ながら楽しく読み進められた。東京の美術館ばかりではなく、青森県立美術館に富山県美術館、群馬県立館林美術館など比較的なじみの薄い館のことも知ることができた。著しく混雑する企画展も珍しくない中、結構良い作品をじっくり鑑賞できる常設展にもっと行きたくなった。大阪市立美術館は来年3月まで休館中、国立国際美術館は展示室内整備のためコレクション展はやっておらず、大阪中之島美術館は常設のコレクション展を開催していなくて、大阪府下は鑑賞できる場所があまり無いが。先月読んだ後藤さおり『日本のミュージアムを旅する』も収蔵品に注目して美術館を紹介していく本だった。こちらは少ないページ数ながら日本全国の国立/公立美術館を取り上げていて、浅く広く全国の美術館を知って美術旅気分になれる一冊だった。もっと色んな美術館に行きたい。