10月のまとめ

10月に行った展覧会のまとめ

 

大阪大谷大学博物館 部活で発掘!部活で考古!―郷土を愛した高校生たち―
大阪中之島美術館 TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション
大阪大学中之島芸術センター 今に生きるラスキン
竹尾淀屋橋見本帖 DESIGNER × PROJECT ―大島依提亜と映画のしごと―
国立文楽劇場資料展示室 国立文楽劇場の40年
あべのキューズモール Mika Pikazo展示会「ILY GIRL」大阪
滋賀県公文書館 湖国の宝が歩んできた道~文化財の危機と保護~
京都市立芸術大学芸術資料館 道を拓きしものたち—知られざる先駆者—
京都府立京都学・歴彩館 京都府立植物園開園100周年記念「植物園のはじまりと100年の森」
大谷大学博物館 美と用の煌めき -東本願寺旧蔵とゆかりの品々-
千總ギャラリー ひとふでの系譜—今尾景年から現代の図案家まで
京都伝統工芸館 時を経て:日本の人間国宝とフランスのメートル・ダール(Maîtres d’Art)
阪神梅田本店 小森谷徹象嵌絵画展~木目に想いを重ねて(Ⅱ)~
阪神梅田本店 イコモチ展~Candy blue~
阪神梅田本店 popman3580 個展LINES 2

 

 

月の頭に大阪大谷大学の博物館へ行った。近鉄滝谷不動駅から歩いて5分ぐらい。春と秋の年2回特別展を開催していて、数年前から特別展が開かれるたびに行っている。ちなみに駅から大学と反対方向に歩くと、駅名になっている瀧谷不動尊があり、さらに1時間ほど歩くと千早赤阪村に出る。年2回しかない滝谷不動駅を利用する日、千早赤阪村の郷土資料館まで足を延ばそうかと駅に着くと頭をよぎるが、今まで瀧谷不動尊までしか行ったことが無い。千早赤阪村の資料館へは富田林駅から出ているバスに乗って棚田の季節にでもいつか行こう。

今回の大阪大谷大学博物館の特別展は、高度経済成長期に大阪南部にある4つの高校の考古系クラブが部活動として行った遺跡の発掘調査に焦点を当てた展示。日本各地で大規模開発が行われていた時期に、これらの部活動により出土した遺物や作られた遺跡の模型は、失われた遺跡のことを今に伝える貴重な資料となった。泉大津高校ではこれらの資料を所蔵して今に伝えており、校内に展示室まであると知って驚いた。出土品や模型以上に今回の展示で印象に残ったのは、高校生たちが展開した古墳保存運動に関する資料で、市に宛てて古墳保存の陳情書を出したり、署名活動を盛んに行っていたという。富田林高校と河南高校の考古学クラブが手書きで執筆した平古墳保存の署名嘆願書がまっすぐな言葉で心に残った。「さあ、私達は奮いて全市民の先頭に立ち、文化財を守る発言を堂々としましょう!」。

今回の展示では4校の考古系クラブの活動資料が展示されていたが、今なお残るのは泉大津高校だけらしい。泉大津といえば、中学生の企画発によって市内の寺院の文化財が一般公開が実現したというニュースを最近目にした*1。公開される来月24日に泉大津まで行ってもいいかもしれない。

 

 

10月に読んだ本のまとめ

 

アダニーヤ・シブリー『とるに足りない細部』
高瀬隼子『め生える』
ハン・ガン『菜食主義者
伏見七尾『獄門撫子此処二在リ』1~2巻
松永K三蔵『バリ山行』

梯久美子『戦争ミュージアム 記憶の回路をつなぐ』
国際通貨研究所イスラーム金融とは何か』
平野千果子『人種主義の歴史』
古川弘子『翻訳をジェンダーする』
松田琢磨『コンテナから読む世界経済 経済の血液はこの「箱」が運んでいる!』
水野一晴『京大地理学者、なにを調べに辺境へ? 世界の自然・文化の謎に迫る「実録・フィールドワーク」』
宮内泰介『社会学をはじめる 複雑さを生きる技法』
宮下規久朗『名画の力』

 

 

ノーベル文学賞受賞のニュースを受け、ハン・ガンの『菜食主義者』を読んだ。受賞後すぐに図書館で予約したら他に予約者が無くてすんなり借りることができたが、今確認すると予約が殺到していた。ある日突然ベジタリアンとなって肉を食べなくなった主婦を中心に、彼女の変化と親族の彼女への想いが3篇の連作小説として描かれていく。単にベジタリアンとなっただけではなく、食事を摂る量もどんどん減って痩せていくうちに植物になるような振る舞いをするようになって、話が周囲と噛み合わない、言ってみれば宇宙人と話しているような別人のように変わっていく。暴力を振るう父を持ち、夫に従う生活を続けていく中である日何かが弾けた結果なのか。人が変わったどころか狂ったようにすら見える姿に、わかりえない恐ろしさを感じながら、最後まで変わったままで在り続けていくのが良かった。

本作の着想元というか種子になったという『私の女の実』も読んだ。頭木弘樹編『ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語』に収録された短編小説で、こちらは女性が本当に植物へと変わってしまい、彼女を鉢に植えて夫が世話をするようになる。貧しい村で生まれて死ぬ生活が嫌で市街地に出てくるも、同じ景色が続くマンションの一室に暮らし続け、ある日植物になってしまう。後半が植物と化した妻の独白となっていて、言葉少ない『菜食主義者』の女性よりも何を思っているのかが伝わってくる。「故郷でも不幸、故郷ではないところでも不幸なら、私はどこへ行くべきだったのでしょう」という一節が心に残る。

マーガレット・アトウッド最初の小説である『食べられる女』(The Edible Woman)は婚約後に拒食症になっていく女性を描いた作品らしい。ハン・ガンの他の作品と合わせて機会があれば読んでいきたい。