1月に行った展覧会のまとめ
髙島屋史料館 吉祥うつし
芦屋市立美術博物館 芦屋の文化財再発見 ―最新のヨドコウ迎賓館温室跡発見まで―
芦屋市立美術博物館 芦屋と阪神・淡路大震災
尼崎市立歴史博物館 尼崎・災害の歴史
国立文楽劇場資料展示室 国立文楽劇場 新収蔵品展
なんばマルイ スパイラル ~推理の絆~ 生誕25周年記念ミュージアム
旧三日市交番 資料からみた三日市の歴史
造幣博物館 造幣局と戦争Ⅰ~貨幣の製造と勲章づくり~
サクラアートミュージアム 「世界初のクレパス®誕生」~創業からクレパス®発明まで百年の物語~
心斎橋PARCO ART SHINSAIBASHI
大丸心斎橋店 没後50年 棟方志功&日本画・洋画セレクション
ジーストア大阪 ドキドキ★ビジュアル★展覧会2024
WESTOON大阪日本橋 冨士原良個展「COUTURE」
モモモグラ 日本麻雀漫画展2025
特別展が気になって数年ぶりに造幣博物館へ行った。天満橋駅で降りて橋を渡ってまっすぐ進み、国道とつながる大きな交差点を右折して少し歩くと造幣局を囲む塀が見えてくる。途中でまほうびん記念館の前を通り、平日事前予約は面倒だがいつか行きたいなと以前来た時と同じことを感じた。正門に辿り着く直前、道路越しに泉布観を見て大阪歴史博物館で2月中頃から泉布観の展示が始まることを思い出し、大阪歴博の展示と合わせて今年こそは泉布観の一般公開に行こうと思ったものの、今調べたところ今年の一般公開はやらないらしい。いつか機会があることを願う。
他に周りたい所もあるので常設展示はほとんど見ないつもりだったが、今回の特別展に勲章の話があるらしいので勲章のコーナーを見て、面白いコインの多い世界の記念貨幣の展示室をざっと周った。過去の国際博覧会に関する記念貨幣の展示コーナーに関西万博の空気を感じる。近代の貨幣の展示エリアには1893年のシカゴ万博に出品した貨幣が展示されていた。
今回の特別展は「造幣局と戦争Ⅰ~貨幣の製造と勲章づくり~」と題し、太平洋戦争終結80年に合わせて戦時下の造幣局について2期に渡って紹介する展示の1期目の展示。満州事変から日中戦争、太平洋戦争へと続いていく中で、物資不足からアルミニウムや黄銅、錫、錫亜鉛、果てには粘土や長石を用いる陶貨幣へと徐々に素材が貨幣に不向きな粗末な物へと変わっていく流れが実際の貨幣の展示と共に説明されていた。満州国を建国した頃、軍需物資としての必要を見越してニッケルを備蓄するために銅貨をニッケル貨幣へ改鋳したという解説パネルから展示が始まっていて、軍事需要に応じて貨幣の素材が次々に変えられていった歴史を知り、生活に身近な貨幣と戦争の結びつきの強さに衝撃を受けた。ニッケル備蓄のための改鋳は計算上1200トンほどに及んだものの、毎年数千トンも輸入していたため効果は薄かったらしい。常設展示で目にして興味を持っていた陶貨が大量に入った袋が展示されていたのも印象に残った。京都の企業の敷地に建つ倉庫から2023年に大量に発見された物だという。第2期の展示ではこの発見された陶貨についての詳しい説明があるようなので、また展示を見に来なければならない。展示室の半分ほどが戦時下に多種多様な素材で製造された貨幣の展示で、もう半分が戦時下に海外の依頼で製造された貨幣と造幣局による勲章づくりについての展示だった。奉天造幣廠で製造された満州国の貨幣に、華北の冀東政府、蒙古連合自治政府、蘭領東インドの貨幣とアジア地域の貨幣が並ぶ。蘭領東インドの貨幣はワヤンの登場人物が描かれた地域色のある物だった。今回の特別展の最後にあったのが造幣局の勲章づくりに関する展示。世界恐慌と関東大震災による不況から貨幣需要が激減し、造幣局で大規模な人員整理が行われる中、造幣局に新たな仕事を産み出したのが勲章づくりで、それが戦時中に勲章の需要が増えていく中で重要な業務になっていったという。不況と勲章と戦争が結びついていたとは。武功のあった軍人に与えられた金鵄勲章の実物を見て展示室を後にした。一つの展示室のみで決して大規模な展示では無かったが印象的な展示だった。
天満橋駅まで戻る道中で大阪韓国文化院の前を通りかかり、たまに展覧会のチラシを見る施設がたまに通る道にあることを知った。造幣博物館に特別展を見に来た時に何か展示をやっていれば入ってみようかな。
1月に読んだ本のまとめ
四季大雅『ミリは猫の瞳のなかに住んでいる』
池田さなえ『笑いで歴史学を変える方法 歴史初心者からアカデミアまで』
宇都宮浄人、柴山多佳児『持続可能な交通まちづくり 欧州の実践に学ぶ』
白水社編集部『外国語を届ける書店』
廣田龍平『ネット怪談の民俗学』
安田峰俊『恐竜大陸 中国』
吉弘憲介『検証 大阪維新の会 「財政ポピュリズム」の正体』
歴史科学協議会編『深化する歴史学 史資料からよみとく新たな歴史像』
話題になっていた新書『ネット怪談の民俗学』を読んだ。インターネット上で生まれて広まったネット怪談を主題に、今後の議論の土台となることを目指して1990年代末から2020年代前半までの日本のネット怪談を民俗学者が概説した一冊。きさらぎ駅、くねくね、コトリバコ、異世界に行く方法、ひとりかくれんぼ、スレンダーマン、リミナルスペース……と、日本のネット怪談を主としてクリーピーパスタや海外の展開を交えながら、それぞれの初出や説明、その性質の考察と、ネット怪談について知りたい時に手に取って読みやすい新書となっている。特定の個人によって作られて書籍や記事内で完結する従来の怪談とは異なり、ネット上で共同構築され続けてていくのがネット怪談の特徴であり、スレンダーマンなど特定の作者がいる物であっても作者への帰属が失われ情報が付与されて伝説を創り出していく。ネット怪談にはマンガや小説などに登場する形でしか触れたことはないが、それぞれのネット怪談についての分析は面白く、因習系怪談からバックルームへと怪談の方向性が変わってきたのではないかという指摘は興味深かった。