10月に行った展覧会のまとめ
心斎橋PARCO ART365
阪神梅田本店 OSAKA ART FES 2025 HANSHIN
阪神梅田本店 優子鈴原画展 PAINTISM in 大阪
大阪府立江之子島文化芸術創造センター 大阪・関西万博デザイン展
大阪府立江之子島文化芸術創造センター 博覧会の残像
大阪府立江之子島文化芸術創造センター 井上和雄 吉田脩二 それぞれの個展
滝畑ふるさと文化財の森センター
河内長野市立ふるさと歴史学習館
杏雨書屋 杏雨書屋の古地図-地図の歴史と日本のかたち-
杏雨書屋 杏雨書屋所蔵の日記類
田辺三菱製薬史料館
ふねしる
阪急うめだ本店 OSAKA ART MARKET 2025
京都国立博物館 宋元仏画─蒼海を越えたほとけたち
京都国立近代美術館 2025年度第3回コレクション展
京都蔦屋書店 DAICHI MIURA「Dolls」
京都蔦屋書店 リュ・ジェユン個展「二つの島を行き来するカモメ」
京都dddギャラリー フェリックス・ベルトラン コネクション―ハバナ ニューヨーク 大阪 メキシコ マドリード 京都―
月の半ばに大阪・関西万博が閉幕した。土日の中央線の混み具合も落ち着き、コスモスクエア駅が実質終点になっていると思いきや、未だに夢洲駅まで夢の名残りを味わいに行く人が結構いるらしい。最寄りの本屋では「記念品にどうぞ」という売り文句で公式ガイドブックが積まれていて、一部世間の熱狂も過去になったのだなと実感した。
阿波座の江之子島文化芸術創造センターで万博に関する2つの展示が開催されるのを知って行ってきた。今回の万博のデザイン面を取り上げた展示と、過去の万博の負の側面を取り上げた展示。後者の展示に興味があって前者はどうでもよかったが、同じ建物でやる以上はセットで見ることにした。土曜日に行くと前者が2時間半待ちで後者はまだ開催されておらず、数日後の平日に改めて出かけて行った。昼過ぎに大阪メトロ千日前線の阿波座駅で降り、数分歩いて会場の江之子島文化芸術創造センターに到着。阿波座駅で降りるたびに、重なって道路が連なる光景がジャンクション界で西の横綱と呼ばれていることを思い出す。建物前には土曜日ほどではないが列ができていて、スタッフによると1時間ほどで入ることができるらしい。平日でも一日前は4時間待ちだったらしく、万博閉幕後でも冷めやらぬ熱を感じさせられた。小説を読みながら待っていると、自作のミャクミャクデザインにあしらった水筒や折りたたみイスを見せびらかしながら、おじさんが周りの人と万博トークに花を咲かせていた。40~50分ほど待って入場。
まずは大阪・関西万博デザイン展へ。今回の万博デザインは、公式のデザインシステムを起点として、アーティストやクリエイターによる会場装飾、サウンドスケープ、市民の参加や二次創作が重なり合った、一個人や一企業による成果物ではなく誰もが参加し関わっていく「生態系」だったことが挨拶で強調されていた。その根底に、こみゃくベースのオープンデザインシステムがあって、それによりリアルとデジタルを横断する文化的共有地として万博に参加・共創できるようにしていったと。読んでもあまりピンと来なかったが、この後にミャクミャク、というかそのパーツ?のこみゃくをあしらったデザインやサインがいくつも展示されていて、この加工しやすい概念を生み出し、目論見通りに二次創作などで盛り上がった……ということなのだろう。どうと言うこともない一つ目の同心円を組み込むだけで、ミャクミャクというか万博デザインっぽくなるのだから、すごい発明だと思う。万博デザインマーク及びミャクミャクが発表された頃に「寄生されている」という声が飛び交ったが、このこみゃくが「寄生」すると様々な物に万博らしさのイメージを植え付けるのだから、あながち笑い話でも無かった。

大阪・関西万博ロゴマークの制作プロセス、デザインシステムのセカンダリーカラー、タイポグラフィの推奨書体、サウンドスケープのデザインコンセプトなど、「いのちの循環」というコンセプトから来る全体的なデザインシステムの展示が並ぶ。こみゃくという発明のすごさを感じられる展示だったものの、このようなデザインシステムの下から各パビリオンのデザイン、もっといえば万博の象徴たる大屋根リングのデザインについての話を知りたかった。会場設計全般の話も。デザイン展よりは建築展の範疇に入るかもしれないが。あとは体感で半分ぐらいのパビリオンの中身が陳腐だったバーチャル万博のことも気になる。ミャクミャクがデザインシステムの根幹の産物とはわかったが、デザイン展と期待して行くにはミャクミャクというかこみゃく以外の展示があまりに少なかった。会場各所のこみゃくスポットの解説がなされていて、解説を読んでまた万博に足を向けたい人もいるだろうに、10月頭に始まった展示なのももったいない。大きな会場でもっと総合的な万博デザイン展がいつか開催されないだろうか。開催されても予約が一瞬で埋まって行けない可能性も高いが。
階段を上って4階の「博覧会の残像」へ。1階の賑わいが嘘のように空いている。こちらはキュレーターの小原真史が所蔵する博覧会関係資料から、戦後80年と関西での万博開催を機に博覧会とは何だったのかを改めて問い直す展示。昨年の大阪国際交流センターの展示で取り上げられた、1903年の第五回内国勧業博覧会で学術人類館の名のもとに人間を展示した人類館事件、今年の尼崎歴史博物館の展覧会で印象に残った、兵器や戦利品などを展示して国民の戦意発揚に貢献した昭和期の戦争博覧会、数年前に読んだ小原真史『帝国の祭典―博覧会と〈人間の展示〉』にあったネイティヴ・ヴィレッジなど、ここ数年で触れた博覧会の負の側面が一ヶ所にまとめられた展示だった。最後の書籍の著者が本展示のキュレーターなのもあって目新しい話はあまり多くなかったが、エキゾチックさが強調されたイラスト、人間展示の絵葉書や写真、戦闘機デザインの戦争博覧会のチラシといった生の展示資料が心に刺さる。最初の方で「産業技術と電気と博覧会」と題して、産業技術をPRして国威発揚していた最初期の万博と、万博と原子力の関わりについての解説と資料展示があって、ここは初めて見る資料が多かった。
隣の部屋の絵画展を見て建物を出た。万博デザイン展の終盤にあった「分断を超え、世界はそれでも繋がることができるのか?」という問いが頭の中で反響していた。分断を乗り越えられるかという根源的な問いを胸に〈共にある〉という感覚の再構築を試みたのが今般の万博だったらしいが、同時代的な体験としてすら果たして共有されているのだろうか。
10月に読んだ本のまとめ
依空まつり『サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと』
二月公『声優ラジオのウラオモテ』13巻
松永K三蔵『カメオ』
李琴峰『月を見に行こうよ』
朝日新聞出版編著『関西ミュージアムガイド』
烏谷昌幸『となりの陰謀論』
ちいさな美術館の学芸員『学芸員が教える 日本美術が楽しくなる話』
西谷格『一九八四+四〇 ウイグル潜行』
松本創編著『大阪・関西万博 「失敗」の本質』
2023年の夏に中国の新疆ウイグル自治区を旅したルポルタージュの西谷格『一九八四+四〇 ウイグル潜行』が面白かった。5分歩くと別の警察組織に出会い、街全体として異様に警察官が多い最初のウルムチの描写から不穏さが漂う。都会のウルムチから離れて自治区内の都市を転々としていく中で、国家の締め付けや監視の下で言葉を失いながらも日々を過ごすウイグルの人々に出会っていく。ウイグル語教育がもはやなされず、モスクがどんどん潰されて国家管理の一部のモスクで集まるしかない状況下でイスラム教信仰も薄れていき、「教育施設」への収監で同化が進む。観光資源としてのモスクは残されながら、監視社会で民族のアイデンティティが消えていっている姿にぞっとした。写真を撮っては警察に消せと言われ、薄氷の上で現地人にインタビューを続けていた著者も、留置場に入って過酷な取り調べを受ける憂き目に遭う。国境を越えて中国から脱したカザフスタンではウイグル人に自由に取材できると思いきや……。最後までハラハラさせられながら、ディストピア国家さながらの社会を生きるウイグルの人々の暮らしを知ることのできる一冊だった。