12月に行った展覧会のまとめ
国立国際美術館 コレクション1 彼女の肖像
キヤノンギャラリー大阪 米美知子写真展「風の子守唄」
大阪府立中之島図書館 博覧会の展覧会Part5「世界最大の行事(祭典)~未来・世界との出会い~」
阪神梅田本店 Narcolepsy1999 7th SOLO Exhibition 『 à volonté~ア ヴォロンテ~』
阪神梅田本店 フカヒレ画集出版記念「Lingering」eve
堺市博物館 羅漢・役行者・行基-山の修行者の系譜―
あべのハルカス近鉄本店 ガレ&ドーム&ラリック展
神戸大学海事博物館 神戸からの船出~近代日本・貨客船の光彩~
兵庫県公館県政資料館 五百旗頭真氏が残した叡智と希望
兵庫県公館県政資料館 北但大震災メモリアル写真展
美術館「えき」KYOTO 没後120年 エミール・ガレ展 美しきガラスの世界
京都市立芸術大学芸術資料館 Road to GEIDAI―美術学部改革と新しい教育をめぐって—
京都市立芸術大学アートスペースk.kaneshiro 筆を執る 金城コレクションに遺る文化人の筆跡
京都工芸繊維大学美術工芸資料館 ティファニーからルクウッドまで-新興アメリカデザインへの注目
京都工芸繊維大学美術工芸資料館 レンズを通して観る浮世―広重の名所の「いま」を撮る
ハリス理化学館同志社ギャラリー Broken Promises 破られた約束-太平洋戦争下の日系カナダ人
京都新聞ビル地下1階印刷工場跡 世界報道写真展2024京都
京都市勧業館みやこめっせ 昭和館巡回特別企画展「くらしにみる昭和の時代 京都展」
京都市勧業館みやこめっせ 京都の大学ミュージアム特集4「ヒトの交流/モノの交流」
河内長野市立ふるさと歴史学習館 中世一山寺院観心寺と七つの郷展
狭山池博物館 令和6年度土木学会選土木遺産パネル展
狭山池博物館 「にほんの あらたな てしごと」橋口新一郎展-古代の敷葉、現代の茶室-
大丸心斎橋店 HYKRX EXEHIBITION
Yoshiaki Inoue Gallery ユアサヱボシ 生誕100周年 Yebosi Yuasa Centennial Exhibition
エスパス ルイ・ヴィトン大阪 ウラ・フォン・ブランデンブルク「Chorsingspiel」
阪神梅田本店 廣瀬祥子個展「anima」
阪急メンズ大阪 9 stories
都合が付いたので月の半ばに神戸大学海事博物館に行った。開館日が月水金の13時半から16時までに限られていて、平日のみ開館している博物館の中でもさらに訪れるのが難しく、行ける機会をうかがっていた。交通アクセスは悪くなく、阪神線の芦屋駅の隣にある深江駅から徒歩10分程で行くことができる。
13時過ぎに深江駅に到着。開館まで時間があったので、前調べ情報を基にキャンパス内にある進徳丸メモリアルという記念館を見に行った。神戸高等商船学校の帆船練習船として大正12年(1923)に進水し、戦時中に汽船練習船に改装され、戦後には訓練航海に参加しながら引き揚げ輸送にも用いられた来歴を持つ船らしい。陸上げして保存展示されていたが阪神淡路大震災で被害を受けたため解体され、跡地にマストや船室を展示するメモリアルとして整備されて今に至る。船のことは何もわからないが、再現された艦長公室や学生居室、主機関の展示はあまり目にしたことが無いため新鮮で、そびえるシガーマストや横たえられた大きな錨からは亡き船の存在感を感じさせられた。なお、このメモリアルの向かいには現在利用されている船が泊まっている。
博物館までの道を歩く途中、ある建物の中に船の模型が見えたのでふらっと入った。案内板によると総合学術交流棟らしい。2022年に運用が開始された海神丸という練習船と、2535TEU積みのコンテナ船の模型が展示されており、期せずして昔の練習船と今の練習船の両方を目にすることができた。奥にあった大学史の年表をざっと眺めて出た。
いよいよ今回の本命である神戸大学海事博物館へ。展示室の入り口に今月の花毛布としてマンタを模した毛布が飾られていて、展示を見る前から船の博物館らしさを感じた。展示室に入る。何隻もの船の模型と結構な数の解説パネルが目に入ってきて、かなりのボリュームの展示であることを予感した。入館者名簿に名前を書き、海事博物館のパンフレットと進徳丸パンフレット、企画展のチラシを手に取って展示を見始めた。開館日が少ないせいか、月の半ば頃ながら名簿に見える今月の来館者は片手で数えられるほどしかいなかった。展示室の4分の1ぐらいが今回の企画展「神戸からの船出~近代日本・貨客船の光彩~」に割り当てられており、展示室を入って右手の企画展から反時計回りにぐるっと展示を見ていった。鉄道や飛行機の時代が来る前、人と荷物両方の輸送で重要な役割を果たしていた船の華やかなりし時代を取り上げた企画展で、特に戦前期の旅客輸送について詳しく取り上げていた。正面にあった浅間丸に始まる貨客船の模型と説明パネルを見た後、日本から世界への航路の紹介パネルと当時のポスターを見て、企画展エリアの中央にあった展示ケースの中の船旅についての資料をじっくり見た。中国航路、日満航路、豪州航路、日本海を横断する航路に台湾、インド、東南アジア、最後には神戸とブラジルの移民航路と、船による移動が当たり前だった時代における日本と世界を繋ぐ航路の説明を読みながら、当時の世界の広さの時間や空間スケールを感じていた。日本海航路がウラジオストクと敦賀を結ぶルートで、リトアニアからウラジオストクに移動して敦賀へとユダヤ難民が渡ってきたという話を知り、福井県に命のビザゆかりの敦賀ムゼウムという博物館があることに納得がいった。ケース内の船旅の資料展示では、船の食事のメニューカードのほか、メニューを再現した食器セットが展示されていたのが面白かった。そしてここにも花毛布はあった。
企画展エリアを出てからも濃かった。ボイラーやレーダーなどの機関といった近代以降の船の設備が壁側にあったかと思うと、六分儀や舵輪、アストロラーベといった古い航海道具が集められたケースがあり、わからないながらに船の雰囲気を味わっていたら、一面に船の模型の展示が広がっていた。LNG船や原子力船むつなどの現代の船から、ガレオンやカティサークなどの蒸気船以前の帆船まで船の模型と、様々な模型に圧倒される。奥には船作りに使われた道具の展示ケースがあり、そこからは和船模型のコーナーとなり、企画展エリアに戻ってきた。展示を見ている最中に何度か職員の方に質問があれば聞いてくださいと声を掛けられるも、わからないこともわからないままに船という存在を否応なく意識させられて展示を見終わった。開館日が少ないのが本当に惜しい。Adobe Flash Playerのサポート終了に伴って開けなくなっている、公式サイトのバーチャルミュージアムが公開される日を心待ちにしている。
平日のみ開いているとのことで、ついでに神戸元町の戦没した船と海員の資料館に行ってみたが、入館時刻をオーバーしていたらしくて入れなかった。資料館のサイトには10時から17時と書いているものの、どうやら16時までで入館は15時半までらしい。仕方が無いので、同じく平日のみ開館の兵庫県公館県政資料館を見に行った。兵庫県下の自治体のPRルームの説明パネルを周っていき、まだまだ知らないし行ったことがないミュージアムがいっぱいあることを再認識した。兵庫県初物語という兵庫発の様々な事物を年表形式で紹介した展示室も印象的。展示室を一周して庭を歩き、駅まで歩いて帰りの電車に乗った。神戸大学海事博物館はまた行きたいし、戦没した船と海員の資料館はいつか行きたいところ。
12月に読んだ本のまとめ
愛野史香『あの日の風を描く』
安堂ホセ『DTOPIA』
アグラヤ・ヴェテラニー『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』
河﨑秋子『私の最後の羊が死んだ』
久栖博季『ウミガメを砕く』
竹町『スパイ教室』12巻
李琴峰『シドニーの虹に誘われて』
朝里樹『21世紀日本怪異ガイド100』
斎藤真理子『隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ』
三井淳平『ブロックでなんでもつくる!ビルダーの頭の中』
李里花編著『アジア系アメリカを知るための53章』
衝撃的なタイトルと少し不気味な装画の『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』が内容も衝撃的で印象に残った。チャウシェスク政権のルーマニアから逃れ、各地を転々とするサーカス団の末っ子である少女の視点で綴られていく小説。短い文章が余白の多いスタイルで続いていき、厳しい生活を子どもの視点で描く鋭い言葉もあいまって一文の重さをずっしりと感じる。髪の毛でぶら下がる芸をする母が墜落するかの心配から解放されるため、少女はおかゆのなかで煮えている子どものメルヒェンの苦しみを想起する。おかゆのなかで煮える子どもの話が繰り返されてく中、少女の生活は変わっていくものの良い方向には向いていかない。祖国からの秘密警察を恐れて人を信じられず、サーカス団育ちの日常から教育をきちんと受けることより舞台を踏んで映画スターとしての見出される成功を夢見る。当時のルーマニア情勢の厳しさと共に、サーカス団として放浪してそこから生活を築いていくことの難しさと閉塞した未来が描かれる。本作が今年最後に読んだ小説となった。