12月のまとめ

12月に行った展覧会のまとめ

 

国立国際美術館 コレクション1 彼女の肖像
キヤノンギャラリー大阪 米美知子写真展「風の子守唄」
大阪府中之島図書館 博覧会の展覧会Part5「世界最大の行事(祭典)~未来・世界との出会い~」
阪神梅田本店 Narcolepsy1999 7th SOLO Exhibition 『 à volonté~ア ヴォロンテ~』
阪神梅田本店 フカヒレ画集出版記念「Lingering」eve
堺市博物館 羅漢・役行者行基-山の修行者の系譜―
あべのハルカス近鉄本店 ガレ&ドーム&ラリック展
神戸大学海事博物館 神戸からの船出~近代日本・貨客船の光彩~
兵庫県公館県政資料館 五百旗頭真氏が残した叡智と希望
兵庫県公館県政資料館 北但大震災メモリアル写真展
美術館「えき」KYOTO 没後120年 エミール・ガレ展 美しきガラスの世界
京都市立芸術大学芸術資料館 Road to GEIDAI―美術学部改革と新しい教育をめぐって—
京都市立芸術大学アートスペースk.kaneshiro 筆を執る 金城コレクションに遺る文化人の筆跡
京都工芸繊維大学美術工芸資料館 ティファニーからルクウッドまで-新興アメリカデザインへの注目
京都工芸繊維大学美術工芸資料館 レンズを通して観る浮世―広重の名所の「いま」を撮る
ハリス理化学館同志社ギャラリー Broken Promises 破られた約束-太平洋戦争下の日系カナダ人
京都新聞ビル地下1階印刷工場跡 世界報道写真展2024京都
京都市勧業館みやこめっせ 昭和館巡回特別企画展「くらしにみる昭和の時代 京都展」
京都市勧業館みやこめっせ 京都の大学ミュージアム特集4「ヒトの交流/モノの交流」
河内長野市立ふるさと歴史学習館 中世一山寺院観心寺と七つの郷展
狭山池博物館 令和6年度土木学会選土木遺産パネル展
狭山池博物館 「にほんの あらたな てしごと」橋口新一郎展-古代の敷葉、現代の茶室-
大丸心斎橋店 HYKRX EXEHIBITION
Yoshiaki Inoue Gallery ユアサヱボシ 生誕100周年 Yebosi Yuasa Centennial Exhibition 
エスパス ルイ・ヴィトン大阪 ウラ・フォン・ブランデンブルク「Chorsingspiel」
阪神梅田本店 廣瀬祥子個展「anima」
阪急メンズ大阪 9 stories

 

 

都合が付いたので月の半ばに神戸大学海事博物館に行った。開館日が月水金の13時半から16時までに限られていて、平日のみ開館している博物館の中でもさらに訪れるのが難しく、行ける機会をうかがっていた。交通アクセスは悪くなく、阪神線の芦屋駅の隣にある深江駅から徒歩10分程で行くことができる。

13時過ぎに深江駅に到着。開館まで時間があったので、前調べ情報を基にキャンパス内にある進徳丸メモリアルという記念館を見に行った。神戸高等商船学校の帆船練習船として大正12年(1923)に進水し、戦時中に汽船練習船に改装され、戦後には訓練航海に参加しながら引き揚げ輸送にも用いられた来歴を持つ船らしい。陸上げして保存展示されていたが阪神淡路大震災で被害を受けたため解体され、跡地にマストや船室を展示するメモリアルとして整備されて今に至る。船のことは何もわからないが、再現された艦長公室や学生居室、主機関の展示はあまり目にしたことが無いため新鮮で、そびえるシガーマストや横たえられた大きな錨からは亡き船の存在感を感じさせられた。なお、このメモリアルの向かいには現在利用されている船が泊まっている。

 

進徳丸メモリアル。窓から屋内を覗ける。

博物館までの道を歩く途中、ある建物の中に船の模型が見えたのでふらっと入った。案内板によると総合学術交流棟らしい。2022年に運用が開始された海神丸という練習船と、2535TEU積みのコンテナ船の模型が展示されており、期せずして昔の練習船と今の練習船の両方を目にすることができた。奥にあった大学史の年表をざっと眺めて出た。

いよいよ今回の本命である神戸大学海事博物館へ。展示室の入り口に今月の花毛布としてマンタを模した毛布が飾られていて、展示を見る前から船の博物館らしさを感じた。展示室に入る。何隻もの船の模型と結構な数の解説パネルが目に入ってきて、かなりのボリュームの展示であることを予感した。入館者名簿に名前を書き、海事博物館のパンフレットと進徳丸パンフレット、企画展のチラシを手に取って展示を見始めた。開館日が少ないせいか、月の半ば頃ながら名簿に見える今月の来館者は片手で数えられるほどしかいなかった。展示室の4分の1ぐらいが今回の企画展「神戸からの船出~近代日本・貨客船の光彩~」に割り当てられており、展示室を入って右手の企画展から反時計回りにぐるっと展示を見ていった。鉄道や飛行機の時代が来る前、人と荷物両方の輸送で重要な役割を果たしていた船の華やかなりし時代を取り上げた企画展で、特に戦前期の旅客輸送について詳しく取り上げていた。正面にあった浅間丸に始まる貨客船の模型と説明パネルを見た後、日本から世界への航路の紹介パネルと当時のポスターを見て、企画展エリアの中央にあった展示ケースの中の船旅についての資料をじっくり見た。中国航路、日満航路、豪州航路、日本海を横断する航路に台湾、インド、東南アジア、最後には神戸とブラジルの移民航路と、船による移動が当たり前だった時代における日本と世界を繋ぐ航路の説明を読みながら、当時の世界の広さの時間や空間スケールを感じていた。日本海航路がウラジオストク敦賀を結ぶルートで、リトアニアからウラジオストクに移動して敦賀へとユダヤ難民が渡ってきたという話を知り、福井県に命のビザゆかりの敦賀ムゼウムという博物館があることに納得がいった。ケース内の船旅の資料展示では、船の食事のメニューカードのほか、メニューを再現した食器セットが展示されていたのが面白かった。そしてここにも花毛布はあった。

企画展エリアを出てからも濃かった。ボイラーやレーダーなどの機関といった近代以降の船の設備が壁側にあったかと思うと、六分儀や舵輪、アストロラーベといった古い航海道具が集められたケースがあり、わからないながらに船の雰囲気を味わっていたら、一面に船の模型の展示が広がっていた。LNG船や原子力船むつなどの現代の船から、ガレオンやカティサークなどの蒸気船以前の帆船まで船の模型と、様々な模型に圧倒される。奥には船作りに使われた道具の展示ケースがあり、そこからは和船模型のコーナーとなり、企画展エリアに戻ってきた。展示を見ている最中に何度か職員の方に質問があれば聞いてくださいと声を掛けられるも、わからないこともわからないままに船という存在を否応なく意識させられて展示を見終わった。開館日が少ないのが本当に惜しい。Adobe Flash Playerのサポート終了に伴って開けなくなっている、公式サイトのバーチャルミュージアムが公開される日を心待ちにしている。

平日のみ開いているとのことで、ついでに神戸元町の戦没した船と海員の資料館に行ってみたが、入館時刻をオーバーしていたらしくて入れなかった。資料館のサイトには10時から17時と書いているものの、どうやら16時までで入館は15時半までらしい。仕方が無いので、同じく平日のみ開館の兵庫県公館県政資料館を見に行った。兵庫県下の自治体のPRルームの説明パネルを周っていき、まだまだ知らないし行ったことがないミュージアムがいっぱいあることを再認識した。兵庫県初物語という兵庫発の様々な事物を年表形式で紹介した展示室も印象的。展示室を一周して庭を歩き、駅まで歩いて帰りの電車に乗った。神戸大学海事博物館はまた行きたいし、戦没した船と海員の資料館はいつか行きたいところ。

 

 

12月に読んだ本のまとめ

 

愛野史香『あの日の風を描く』
安堂ホセ『DTOPIA』
アグラヤ・ヴェテラニー『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』
河﨑秋子『私の最後の羊が死んだ』
久栖博季『ウミガメを砕く』
竹町『スパイ教室』12巻
李琴峰『シドニーの虹に誘われて』

朝里樹『21世紀日本怪異ガイド100』
斎藤真理子『隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ』
三井淳平『ブロックでなんでもつくる!ビルダーの頭の中』
李里花編著『アジア系アメリカを知るための53章』

 

 

衝撃的なタイトルと少し不気味な装画の『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』が内容も衝撃的で印象に残った。チャウシェスク政権のルーマニアから逃れ、各地を転々とするサーカス団の末っ子である少女の視点で綴られていく小説。短い文章が余白の多いスタイルで続いていき、厳しい生活を子どもの視点で描く鋭い言葉もあいまって一文の重さをずっしりと感じる。髪の毛でぶら下がる芸をする母が墜落するかの心配から解放されるため、少女はおかゆのなかで煮えている子どものメルヒェンの苦しみを想起する。おかゆのなかで煮える子どもの話が繰り返されてく中、少女の生活は変わっていくものの良い方向には向いていかない。祖国からの秘密警察を恐れて人を信じられず、サーカス団育ちの日常から教育をきちんと受けることより舞台を踏んで映画スターとしての見出される成功を夢見る。当時のルーマニア情勢の厳しさと共に、サーカス団として放浪してそこから生活を築いていくことの難しさと閉塞した未来が描かれる。本作が今年最後に読んだ小説となった。

11月のまとめ

11月に行った展覧会のまとめ

 

ギャルリVEGA 佐々木幹夫作品展「紙皿に描いた 偉人たちの名言集」
逸翁美術館 漆芸礼讃-漆工・三砂良哉-
神戸税関広報展示室    
生糸検査所ギャラリー    
神戸華僑歴史博物館    
FELISSIMO GALLERY ミュージアム部展
神戸市立博物館 コレクション展示
京都写真美術館ギャラリー・ジャパネスク 清永安雄写真展「Moment of one second」
京都写真美術館ギャラリー・ジャパネスク 大坂寛写真展「bondage」
京都市京セラ美術館 巨匠たちの学び舎 日本画の名作はこうして生まれた
京都市京セラ美術館 MIKADO2:ワニのためのフーガ
京都市歴史資料館 賀茂季鷹と古典の「知」-京都市歴史資料館寄託山本家資料展-
京都市学校歴史博物館 京都の洋画―京都で描く・京都を描く―
京都蔦屋書店 ART SESSION by 京都 蔦屋書店
京都蔦屋書店 岩崎貴宏個展「箱景」
京都蔦屋書店 作田優希「留められた景色」
アルフォンス・ミュシャ館 アフィショマニ!ミュシャマニ!
アルフォンス・ミュシャ館 ミュシャLabo#05「特集!リトグラフ
髙島屋史料館 DESIGN MANIA~百貨店・SCのデザイン~
大阪市立科学館 日本の科学館は大阪から
大阪中之島美術館 Osaka Directory 7 Supported by RICHARD MILLE 小松千
大阪大学中之島芸術センター 旅するカミサマ、迎える人々~伊勢大神楽と阿波の木偶まわしにみる家廻り芸能の現在
阪急うめだ本店 武田双雲展 天真爛漫~innocence~
阪急うめだ本店 藤岡ちさ絵画展 星空パーティー

 

 

昨年知ったIKEDA文化DAYという池田市文化施設のウォークラリーに参加してみた。文化の日を含んだ3連休の間に池田市内の文化施設を巡り、11施設全てを周ると参加賞がもらえたり、景品の抽選会に参加できたりするイベントだ。期間中には落語会や音楽コンサートが開催されるほか、産総研関西センターの一般公開が行われるなど、ウォークラリー以外にも様々な催しが行われる。展覧会好きとしては、普段は有料の逸翁美術館小林一三記念館が無料になるのが嬉しい。この日も逸翁美術館の展示を見るために池田市まで出かけていった。

池田駅の改札を出て左に進んだところでウォークラリーの台紙をもらってスタート。あいにくの雨と神戸で見たい展示があったのとで、周る場所は逸翁美術館だけと決めていたが、駅のすぐ近くにあったギャルリーVEGAの展示だけざっと鑑賞。池田市を歩くのは3度目になるが、市役所や警察署が面する大通りから突き当りを右折し、坂を上って逸翁美術館へ至るルートを毎回歩いている。大雨の中で上り坂を進むのはなかなか大変で、美術館に着く頃には靴に染み込んだ水で足先が冷たさを通り越して少し痛かった。

今回の特別展は大正から昭和にかけて活躍した三砂良哉という漆芸家に焦点を当てた展示で、彼を大々的に取り上げた日本初の展覧会らしい。両手に収まる小ぶりな薄茶器から展示が始まった。シンプルな黒地や無地の木に蒔絵や螺鈿で模様がすっと施され、落ち着いてまとまった美しい茶道具が並ぶ。楽譜が蒔絵で施された黒地の棗は、以前来館した時に目にした小林一三イチオシの品と同じだと思う。自ら制作した歌劇の楽譜を施した茶器を茶会で出したものの、誰からもそのことに気づいてもらえずに残念がったという代物。続く第2章は壊れたスペイン扇子の親骨などを用いた香合の展示。扇子の親骨という小さな場所に細やかな蒔絵を施し、香合に生まれ変わらせた発想と技量がすごい。第3章は風呂先屏風や炉縁といった大きめの茶道具の展示が続き、章の最後は茶杓という小品に戻った。撮影可の石蕗の葉が大きく描かれた蒔絵盆を、他の人が映り込まないように撮影して第4章へ。第4章は懐石道具と菓子器。一見すると黒一色の無地の盆だが、微かなでこぼこがよく見るとあって、鶴が施されていたと気づく黒地の盆が強く印象に残った。夜桜塗と呼ばれる手法らしい。最後の第5章はそれ以外の手仕事の展示。これまた撮影可だった黒地蜜柑蒔絵手箱を写真に収めて展示室から出た。大阪画壇で名を馳せた須磨耐水と組んだ作品がいくつかあり、どれぐらいの深さかはわからないが同時代の芸術家と繋がりを感じた。

池田駅まで歩き、電車に乗って神戸三宮駅に着く頃には雨は上がっていた。フラワーロードを南下し、神戸税関の広報展示室と向かいのKIITOにある生糸検査所ギャラリーで展示を見た後、神戸華僑歴史博物館、フェリシモミュージアムグッズ展、神戸市立博物館のコレクション展を見て一日が終わった。雨じゃない日にIKEDA文化DAYのウォークラリーはいつか全施設制覇してみたい。

 

 

11月に読んだ本のまとめ

 

赤松りかこ『グレイスは死んだのか』
岩井圭也『われは熊楠』
市街地ギャオ『メメントラブドール

相馬拓也『遊牧民、はじめました。 モンゴル大草原の掟』
平芳裕子『東大ファッション論集中講義』
和田光弘『アメリカは、いかに創られたか レキシントン・コンコードの戦い

 

 

光文社新書の『遊牧民、はじめました。 モンゴル大草原の掟』が面白かった。長年モンゴルでフィールドワークをしてきた人文地理学者が遊牧民の生活を赤裸々に綴っていく。数々の狼藉を受けた経験談から始まり、遊牧民と暮らし、放牧についていき、肉を食らい、生活に入って行く中で、草原での暮らしに荒々しい気性の理由を感じていく。
冬は極寒の気象の中で家畜頼りの生活を送る遊牧民との暮らしは、牧歌的で悠々自適な生活を送る遊牧民のイメージとは大きく異なっていて、家畜の移動にトラックが用いられたりと現代化しているのも印象的だった。

市街地ギャオの『メメントラブドール』は、Tinderでノンケ男を釣って喰っては動画をTwitterの裏垢にあげ、平日昼は院卒インフラエンジニアとして働きながら、家賃のために夜には男の娘コンカフェのキャストという副業をする、元「高専の姫」たる20代男性を描いた小説。盛られた主人公の設定だけでもう面白くて手を出したが、周囲を評していく言葉がインターネットで人を刺していく言葉で、その嫌な鋭さを小説という形で読めたのが良かった。主人公は好みのタイプとしてチー牛と述べているが、その具体例に思わず笑ってしまった。「マイナーなスマホゲーに可処分時間の大半を捧げていて、そのざまを自虐的に話しているときが一番楽しそうだ。スマホゲーをしている男のなかでも特に、残りの可処分時間をポケモン対戦に費やしているような男が私は一番好きだった。」簡単に垢抜けにアクセスできるようになったため、本物ではないチー牛として交雑牛という語を生んでいるのも面白い。「Tinderのチー牛は大半がナードとカルチャーの交雑牛なのだ。」

10月のまとめ

10月に行った展覧会のまとめ

 

大阪大谷大学博物館 部活で発掘!部活で考古!―郷土を愛した高校生たち―
大阪中之島美術館 TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション
大阪大学中之島芸術センター 今に生きるラスキン
竹尾淀屋橋見本帖 DESIGNER × PROJECT ―大島依提亜と映画のしごと―
国立文楽劇場資料展示室 国立文楽劇場の40年
あべのキューズモール Mika Pikazo展示会「ILY GIRL」大阪
滋賀県公文書館 湖国の宝が歩んできた道~文化財の危機と保護~
京都市立芸術大学芸術資料館 道を拓きしものたち—知られざる先駆者—
京都府立京都学・歴彩館 京都府立植物園開園100周年記念「植物園のはじまりと100年の森」
大谷大学博物館 美と用の煌めき -東本願寺旧蔵とゆかりの品々-
千總ギャラリー ひとふでの系譜—今尾景年から現代の図案家まで
京都伝統工芸館 時を経て:日本の人間国宝とフランスのメートル・ダール(Maîtres d’Art)
阪神梅田本店 小森谷徹象嵌絵画展~木目に想いを重ねて(Ⅱ)~
阪神梅田本店 イコモチ展~Candy blue~
阪神梅田本店 popman3580 個展LINES 2

 

 

月の頭に大阪大谷大学の博物館へ行った。近鉄滝谷不動駅から歩いて5分ぐらい。春と秋の年2回特別展を開催していて、数年前から特別展が開かれるたびに行っている。ちなみに駅から大学と反対方向に歩くと、駅名になっている瀧谷不動尊があり、さらに1時間ほど歩くと千早赤阪村に出る。年2回しかない滝谷不動駅を利用する日、千早赤阪村の郷土資料館まで足を延ばそうかと駅に着くと頭をよぎるが、今まで瀧谷不動尊までしか行ったことが無い。千早赤阪村の資料館へは富田林駅から出ているバスに乗って棚田の季節にでもいつか行こう。

今回の大阪大谷大学博物館の特別展は、高度経済成長期に大阪南部にある4つの高校の考古系クラブが部活動として行った遺跡の発掘調査に焦点を当てた展示。日本各地で大規模開発が行われていた時期に、これらの部活動により出土した遺物や作られた遺跡の模型は、失われた遺跡のことを今に伝える貴重な資料となった。泉大津高校ではこれらの資料を所蔵して今に伝えており、校内に展示室まであると知って驚いた。出土品や模型以上に今回の展示で印象に残ったのは、高校生たちが展開した古墳保存運動に関する資料で、市に宛てて古墳保存の陳情書を出したり、署名活動を盛んに行っていたという。富田林高校と河南高校の考古学クラブが手書きで執筆した平古墳保存の署名嘆願書がまっすぐな言葉で心に残った。「さあ、私達は奮いて全市民の先頭に立ち、文化財を守る発言を堂々としましょう!」。

今回の展示では4校の考古系クラブの活動資料が展示されていたが、今なお残るのは泉大津高校だけらしい。泉大津といえば、中学生の企画発によって市内の寺院の文化財が一般公開が実現したというニュースを最近目にした*1。公開される来月24日に泉大津まで行ってもいいかもしれない。

 

 

10月に読んだ本のまとめ

 

アダニーヤ・シブリー『とるに足りない細部』
高瀬隼子『め生える』
ハン・ガン『菜食主義者
伏見七尾『獄門撫子此処二在リ』1~2巻
松永K三蔵『バリ山行』

梯久美子『戦争ミュージアム 記憶の回路をつなぐ』
国際通貨研究所イスラーム金融とは何か』
平野千果子『人種主義の歴史』
古川弘子『翻訳をジェンダーする』
松田琢磨『コンテナから読む世界経済 経済の血液はこの「箱」が運んでいる!』
水野一晴『京大地理学者、なにを調べに辺境へ? 世界の自然・文化の謎に迫る「実録・フィールドワーク」』
宮内泰介『社会学をはじめる 複雑さを生きる技法』
宮下規久朗『名画の力』

 

 

ノーベル文学賞受賞のニュースを受け、ハン・ガンの『菜食主義者』を読んだ。受賞後すぐに図書館で予約したら他に予約者が無くてすんなり借りることができたが、今確認すると予約が殺到していた。ある日突然ベジタリアンとなって肉を食べなくなった主婦を中心に、彼女の変化と親族の彼女への想いが3篇の連作小説として描かれていく。単にベジタリアンとなっただけではなく、食事を摂る量もどんどん減って痩せていくうちに植物になるような振る舞いをするようになって、話が周囲と噛み合わない、言ってみれば宇宙人と話しているような別人のように変わっていく。暴力を振るう父を持ち、夫に従う生活を続けていく中である日何かが弾けた結果なのか。人が変わったどころか狂ったようにすら見える姿に、わかりえない恐ろしさを感じながら、最後まで変わったままで在り続けていくのが良かった。

本作の着想元というか種子になったという『私の女の実』も読んだ。頭木弘樹編『ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語』に収録された短編小説で、こちらは女性が本当に植物へと変わってしまい、彼女を鉢に植えて夫が世話をするようになる。貧しい村で生まれて死ぬ生活が嫌で市街地に出てくるも、同じ景色が続くマンションの一室に暮らし続け、ある日植物になってしまう。後半が植物と化した妻の独白となっていて、言葉少ない『菜食主義者』の女性よりも何を思っているのかが伝わってくる。「故郷でも不幸、故郷ではないところでも不幸なら、私はどこへ行くべきだったのでしょう」という一節が心に残る。

マーガレット・アトウッド最初の小説である『食べられる女』(The Edible Woman)は婚約後に拒食症になっていく女性を描いた作品らしい。ハン・ガンの他の作品と合わせて機会があれば読んでいきたい。

9月のまとめ

9月に行った展覧会のまとめ

 

髙島屋史料館 DESIGN MANIA~百貨店・SCのデザイン~
大阪国際交流センター 「人類館事件」を知っていますか?「博覧会と差別」
あべのハルカス美術館 開館10周年記念イベント
狭山池博物館 交差する技術-朝鮮半島系土器の受容と古代工人の技術交流-
大阪府江之子島文化芸術創造センター くりかえしとつみかさね2 大阪府20世紀美術コレクションと現代作家たち
おおさかATCグリーンエコプラザ    
ATC 絵師100人展 14 大阪展
大阪府立中央図書館 梶山俊夫原画展「あほろくの川だいこ」
大阪府立中央図書館 東海道・鉄道・新幹線
大阪府立中央図書館 古墳から古代へー激動の柏原ー
堺市博物館 仁徳天皇陵と近代の堺
鉄炮鍛冶屋敷 青龍鉾人形のめざめ―200年の時を超えて―
奈良県立美術館 エドワード・ゴーリーを巡る旅
奈良県立図書情報館 ゴーリーの世界へ飛び込む——ゴーゴーゴーリー
奈良県立図書情報館 永田家文書とその世界

 

 

今年3月に開館したが行きそびれていた鉄炮鍛冶屋敷で企画展が開催されることを知り、堺市博物館の企画展とセットで行ってきた。堺市の博物館では、阪田三吉記念室のある舳松人権歴史館や、八尾市にもあるコンペイトウミュージアムに行ったことが無く、旧堺燈台などの名所と合わせてまだまだ堺市に行く機会はありそうだ。

三国ヶ丘駅で降り、仁徳天皇陵の外縁部を歩いて堺市博物館へ。今回の企画展は「仁徳天皇陵と近代の堺」で、明治期以降に宮内省により仁徳天皇陵が整備されていく中で、地元の堺に住む人々と天皇陵がどのように関わってきたかを紹介した展示。初っ端に明治33年(1900)に設置されて大正6年(1911)に廃止されたという英文の制札が展示されていた。禁止事項としてshooting birdsやcatching fishが挙げられており、その後にあった別の制札でも銃猟禁止が大きく掲げられていて、当時の銃の普及具合や猟の状況が気になった。海外向けだからこその内容だったのか、日本語でも同様だったのか。これぐらいの時代になると英文の制札があるのだなあ、では英文の制札は開国からどれぐらいで立てられたのだろう、地方ではどうだったのだろうと、最初の制札一つに色々と考えていた。第1章は「近代における陵墓管理の始まり」として、幕末に公武合体策の一環として実施された文久の修陵の説明から始まり、明治期の実測図や陵墓を描いた絵画資料が展示されていた。明治5年(1872)の仁徳天皇陵の石室調査で製作された副葬品の資料図が、今なお仁徳天皇陵の副葬品を知る唯一の資料となっているという記述に、遺跡調査、まして天皇陵という場の調査の難しさを感じた。第2章は「明治から戦前における仁徳天皇陵」。仁徳天皇陵と周辺住民の関わりが窺える展示で、本展の中でこの章が一番興味深かった。仁徳天皇陵の濠が周辺住民から溜め池としての役割を期待されて出された嘆願書や、豪雨による線路の浸水被害に悩む阪和電鉄が線路の水を仁徳天皇陵の濠に流す注水管の埋設を願い出た資料など、単なる崇敬対象だけでなく、大きな濠を有するが故に地域住民の生活に関わっていたのを初めて知った。かつては周辺部に水田が広がっていたという。第3章は「堺の人びとと仁徳天皇陵」。中百舌鳥村の筒井幸四郎が守長として百舌鳥の陵墓全般を管理していた資料から、地域住民が国の官吏となって仁徳天皇陵を管理をしていたことが紹介されていた。大正13年(1924)に近隣の青年団勤労奉仕で参拝道の整備が行われており、ここからも地元の人々が仁徳天皇陵の整備に関わっていたのが窺える。明治30年代に皇陵巡拝熱が高まった結果生まれた、御朱印帳の皇陵バージョンに当たる陵印軸が展示されてたのが面白かった。第4章は「堺への御幸、行啓と仁徳天皇陵の御参拝」。明治10年(1877)の明治天皇による御幸をはじめ、堺への御幸や行啓に関する資料の展示で、熊野小学校に伝わる額装絵画などが展示されていた。第5章は「写された陵墓—谷村為海が残した古写真を中心にー」で往時の仁徳天皇陵などのガラス乾板のパネル展示で、最後の第6章は「これからの仁徳天皇陵」として近年開催された考古学的調査や三次元点群データによる分析に関するパネルが展示されて終わり。陵墓として政府など上からの管理がメインだと思っていたが、予想以上に地域の人々と仁徳天皇陵の関わりがあったことを知る企画展だった。

バスでうまいこと巡るルートを調べておらず、堺市博物館から40分ほど湊駅まで歩き、南海本線で2駅先の七道駅へ。駅から急ぎ足で数分歩き、入館時間の〆切ぎりぎりに鉄炮鍛冶屋敷に到着した。近隣の2施設と共に町家歴史館として共通入館券が販売されているが、時間が無いので鉄炮鍛冶屋敷のみの券を購入。井上関右衛門という鉄炮鍛冶の邸宅であり、全国で唯一残る江戸時代の鉄炮鍛冶の作業場兼住居が歴史館として公開されている。まず解説ビデオを視聴し、その後に中をぐるっと周った。商いを行っていた場所を再現した「みせの間」のあるメインの建物と、作業場を再現した鍛冶場からなり、展示物がそれほど多くなかったので閉館までの30分でなんとか見終わった。鉄砲作りが銃身などの金属部、手に持つ台木部、所々に施す装飾部、弾丸作りとパーツごとの分業で作られていた話や、鉄砲の銃身を作るには刀剣作りでは使わない銃身内部を整える棒が用いられる話など、町家として建物を楽しむよりは鉄砲に関する展示が気になった。企画展は、屋敷の所在地で行われていた祭りで用いられたという青龍鉾人形という人形を中心に据えた展示。あまり具体的にどのような祭りが開催されたかは不明ながら、人形の修理のためにクラウドファンディングが行われているらしい。展示を見終えて七道駅まで戻った際、河口慧海の像が駅前のロータリーに立っていることに気づく。次に来る時は河口慧海が学んだ清学院にも行きたい。

 

 

9月に読んだ本のまとめ

 

朝比奈秋『サンショウウオの四十九日』
ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー『フライデー・ブラック』
一色さゆり『ユリイカの宝箱 アートの島と秘密の鍵』
柯宗明『陳澄波を探して 消された台湾画家の謎』
駿馬京『あんたで日常を彩りたい』2巻
並木陽『斜陽の国のルスダン』
fudaraku『竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る』

大坪覚『東京のワクワクする大学博物館めぐり』
金沢百枝キリスト教美術をたのしむ 旧約聖書篇』
佐藤光展『心の病気はどう治す?』
電通PRコンサルティング『企業ミュージアムへようこそ PR資産としての魅力と可能性』下巻

 

 

『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』で知って気になっていた『フライデー・ブラック』を読んだ。両親がガーナからの移民であるアフリカ系アメリカ人作家のデビュー作となった短編集。本を開いてすぐに現れる、「「退屈なんてできないはずよ? 本は何冊書いたの?」と言った母へ捧ぐ」という研究者や作家に刺さりそうな献辞に笑い、最初に収められた「フィンケルスティーン5」の衝撃から12編を一気に読んだ。ほとんどの作品で暴力がテーマになっており、変わった舞台設定やSF設定の作品を挟みながら、アフリカ系アメリカ人が肉体的にも精神的にも受ける暴力を想起する作品が並ぶ。1作目の「フィンケルスティーン5」では、黒人の少年少女をチェーンソーで首を切って殺害した白人男性が正当防衛として無罪となった判決を受け、憤った黒人らが起こす暴行事件が多発する中、主人公の男性が報復の欲求に悩む。家の近くで不審な黒人を見かけた際に通報するか自ら射殺するかを選択できるゲームを体験できるテーマパークを描いた「ジマー・ランド」が設定として面白かった。緊急事態の対処に備えるためのテーマパークだったのが、運営利益の問題で子どもに入場が解禁されてしまう。殺され役としてテーマパークに勤める主人公は、仕事として割り切って役目を果たしていたが……。表題作の「フライデー・ブラック」も、押し寄せるゾンビのような客と客を捌く店員の戦場としてショッピングモール商戦を描いていてやはり面白かった。ついていけない人々の死体があちこちに生まれながらも、セールに群がる客と店員の戦いは続き、高い売り上げを叩き出す主人公は売り上げトップに与えられる商品を目指して華麗に客を捌いていく。最後に収められた「閃光を越えて」が、核の光で皆が最期を迎えてリセットする世界を舞台に、好き勝手に生きていく人々を描いた作品で、ループするからこそあらゆる暴力が繰り返されてきたのが描かれており、暴力の印象が強い短編集のラストとして最悪で良かった。

月末に読んだ『陳澄波を探して』は、台湾美術の微妙な立ち位置と歴史が感じられる興味深い長編小説だった。絵画の修復を依頼されたことをきっかけに、画家と記者のコンビが台湾美術で消された画家のことを関係者への取材を重ねて解き明かしていくというあらすじ。1895年という日清戦争の終わった年に生まれ、戦後の白色テロで1947年に亡くなった陳澄波。日本領の台湾に生まれ育ち、文化的な祖国である中国に憧れ、宗主国の日本に複雑な感情を抱きながらも日本で学び、プロレタリア美術の影響を受けつつ、西洋の印象派を咀嚼して独自の画風を確立していく姿に、戦前の台湾の微妙な立ち位置を感じる。印象派の影響を受けた美術をブルジョワ美術と批判し、民衆の苦しみを描く写実美術こそが今描かれる美術だと述べる、序盤に登場した画家・江豊の批判が印象に残る。政治と美術が否応なく分かたれない時代に、重鎮であるが故に政治に関わって最期を迎えてしまった陳澄波の運命が悲しい。

8月のまとめ

8月に行った展覧会のまとめ

 

梅田サウスホール スマイルフェス2024 大阪
寝屋川市埋蔵文化財資料館 縄文時代体感!―讃良川遺跡出土の遺物をとおして―
四條畷市立歴史民俗資料館    
大東市立歴史民俗資料館 新田会所をとりまくヒトとモノ~平野屋新田会所から~
柏原市立歴史資料館 江戸時代の列島改造と国分村-稲垣重綱没後370年-
大阪府中之島図書館 1/300のたくらみ 景観模型の世界
阪神梅田本店 Kou画集出版記念イラスト展「赫」OSAKA
阪神梅田本店 第3回 イラスト甲子園 2024
阪神梅田本店 potg作品集出版記念イラスト展「日影」OSAKA
阪急うめだ本店 小川貴一郎展“GURUGURU - eye am watching you - ”
津波・高潮ステーション    
大阪府江之子島文化芸術創造センター ~音楽でたどる大阪府の美術コレクション~20世紀のイメージとサウンド2

 

 

フィギュア展示イベントのスマイルフェスに始まり、大阪府自治体の郷土資料館に防災教育施設の津波・高潮ステーションと、今まで行ったことの無かった場所を何ヶ所も周る月だった。お盆の墓参りをした日には、大阪府でも北東部にはあまり行ったことが無いから行ってみるかと思い立ち、午後から寝屋川市四条畷市大東市の資料館を巡った。あまり利用したことのないJRの学研都市線に乗ってまずは寝屋川公園駅へ。埋蔵文化財資料館は駅を出て横断歩道を渡ってすぐのマンションの1階に入っていた。こういう場所に資料館が入っているのは初めて見たかもしれない。

入って右側の壁側から奥にかけ、寝屋川市から発掘された石器や土器などの考古資料が時代ごとに展示された常設展示があり、入ってすぐの所では企画展として讃良川遺跡の発掘資料が展示されていた。サメの歯の装飾品が展示されており、今では内陸部にある寝屋川市にまで縄文期には海が迫っていたことに驚いた。土地勘は無いし縄文時代にも詳しくないので、職員の方が熱心に展示を解説してくれて非常にありがたかった。歩いて行ける場所にある史跡を紹介してもらって地図をいただいたので行ってみることに。

資料館でいただいた地図。地図をよく見ていれば迷わなかったはずが……。

駅前に戻って地図を見ながら歩き出す。所々にあった案内板には鉢かづき姫がモチーフのキャラがあしらわれていて、鉢かづき姫が寝屋川市の民話だと知る。地図の下の方にある帰り道から直接史跡を目指すのは上り坂が多くて厳しいと聞いたので、概ね地図の順路通りに進んで行く。途中の住宅地で少し道がわからなくなるも、明光寺の雷神石を見て休憩所を過ぎ、目的地目前の打上神社になんとか辿り着いた。鳥居と鳥居の脇の山道を見て、神社の脇にある坂道の先に史跡マークがあるなと地図を見て、どっちだろうと少し迷って鳥居脇の道を歩き出す。そろそろ目的地に着くかなと思いながら歩いていたら、左側に住宅が見え、間違った道に進んだことにようやく気づいた。引き返して鳥居をくぐって歩くこと数分、炎天下で汗だくになりながら目的地の石宝殿にやっと到着。地図をずっと90度傾けて見ていたため、オレンジ色で囲われた石宝殿周辺図が一切目に入っておらず、ちゃんと「鳥居をくぐる」と記されていたのに気づかなかった。国指定史跡の石宝殿は石を積み上げた横口式石槨という古墳で、底石と蓋石が当時の状態のまま現在も同じ場所にあるのはここが唯一らしい。暑い中で歩き続けた疲労感が強すぎて、史跡と対面しても特に感慨も無く写真を撮って駅まで戻った。資料館からの最短ルートで無くても上り坂は多いので、天候が厳しい時は無理して行かない方がいい。

2駅南に下って四条畷駅。東出口を出ると四条畷学園の文字が目に飛び込んできた。歴史民俗資料館までに歩いた大きな道路は、歩行者スペースや歩道の無い中で車がそこそこ走ってきて少し怖かった。資料館は歴史資料の展示スペースが一室と民具などの展示スペースが一室の構成で、涼んでいってくださいという職員の方の言葉に甘えて休憩してから展示を一周した。日本最古とされるキリシタン墓碑が展示されていたのが印象深い。四条畷まで折角来たので駅周辺を少し歩いていたら、飲食店の店先に謎のサンタクロースのオブジェがあるのをいくつも見かけた。絵本作家の谷口智則が代表作『100にんのサンタクロース』から町のシンボルとなる物を作ろうと始めたプロジェクトらしい。あまりにも暑い日々をどうにか変えるようなプレゼントが欲しい。

1駅下って野崎駅。大阪桐蔭高校の最寄り駅である。歴史民俗資料館までの徒歩10分の道のりの途中でスーパーとドラッグストアがあり、ほぼ尽きかけていた手持ちの飲み物を補充した。資料館の入る建物は旧四条小学校を活用しており、資料館と図書館が入っているほか、体育館とグラウンドが併設されている。近世までの地元の資料を展示した常設展示室の階と、企画展示室のある階に分かれており、展示スペースの広さや綺麗さはこの日訪れた館の中で一番だった。企画展は江戸期の新田開発の際にその経営や管理にあたった新田会所の資料の展示。ここでも四条畷市の資料館でも飯盛山に関する展示を常設展示で目にし、この辺り一帯での三好長慶の存在の大きさを感じた。

寝屋川のさらに先で今回は行くことを見送った交野市は、星のブランコという木床板の吊り橋があるので、駅から遠くて諦めた歴史民俗資料展示室ともどもいつか行ってみたい。まだ行ったことのない能勢町はアスレチックでしか知らないが、いつか行く日は来るだろうか。

 

 

8月に読んだ本のまとめ

 

河﨑秋子『愚か者の石』
坂崎かおる『海岸通り』
向坂くじら『いなくなくならなくならないで』
駿馬京『あんたで日常を彩りたい』
宮澤伊織『裏世界ピクニック』9巻

阿部芳郎編著『縄文時代を解き明かす 考古学の新たな挑戦』 
オラシオ『図書館ウォーカー2 旅のついでに図書館へ』
笠井亮平『インドの食卓 そこに「カレー」はない』
電通PRコンサルティング『企業ミュージアムへようこそ PR資産としての魅力と可能性』上巻
室橋裕和『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』

ペーター・ヴァン・デン・エンデ『旅する小舟』
エドワード・ゴーリー 『青い煮凝り』

 

 

今月はインド料理に関する新書を2冊読んだ。一冊目は南インド研究者の笠井亮平による『インドの食卓』。「そこに「カレー」はない」という副題の通り、インド料理といえばカレーというイメージを解きほぐし、多彩な地域料理から国際化の中での現代料理まで、インド料理の多様さを描き出した一冊。『南海寄帰内法伝』での仏教僧の食事やバーブルの食べ物についての感想といった歴史的な話から始まり、インド料理イメージの代名詞と言えるタンドリーチキンやバターチキンはモーティー・マハルというレストランの発明である話や辛くないインド料理の話、ベジメニューの話にインド中華料理の話などが展開され、最後は日本におけるインド料理の話で終わる。水にクミンシードを混ぜてスパイスを加えた黄緑色のドリンクのジャルジーラや、インド中華を代表するという味付けのシェズワン(中華の四川)などは、全然知らないインド料理だった。最後の章ではいわゆるインネパ系に限らない、インドの諸地域の料理を味わえるお店が挙げられている。港町マンガロールの料理を専門としてスパイスのきいた魚介料理を提供する有楽町のバンゲラズキッチン、祖師ヶ谷大蔵のチェスティナード料理店スリマンガラム、「ナンはありません」という貼り紙を出す町屋のベンガル料理店プージャー、原宿のゴア料理店viva goa indian cafe。一回ぐらいは色々味わってみたい。

もう一冊はアジア専門ジャーナリストの室橋裕和による『カレー移民の謎』。こちらは日本におけるインド料理店、その中でも「インネパ」と称されるネパール人経営のインド料理店について取材した一冊。なぜネパール人がインド料理店を出しているのか、なぜここまでインネパ系のインド料理店が増えたのか、インド料理店を出すネパール人たちはどのような暮らしをしているのかといった疑問に対し、当事者たちへの取材からその実態を浮かび上がらせていく。農業と観光業しか産業が無くて出稼ぎ国家となっているネパールからやってきた人々が、金を稼ぐためにインド料理店に勤めて数年で独立していき、売れる物として元の店と同じようなコピーメニューで新たな店を開いていく。店を運営するネパール人の子供たちの教育面の苦しみが描かれていたのが心に残る。

7月のまとめ

7月に行った展覧会のまとめ

 

京都工芸繊維大学美術工芸資料館 博覧会展―博覧会を楽しむ20のエピソード
大谷大学博物館 教科書の素材
中信美術館 伊部京子展 和紙物語
京都文化博物館 日本の巨大ロボット群像−鉄人28号ガンダム、ロボットアニメの浪漫−
京都文化博物館 祇園祭山鉾巡行の歴史と文化
京都文化博物館 天平の都 恭仁宮 最新の発掘調査成果から
芦屋市立美術博物館 創立100周年記念 信濃橋洋画研究所―大阪にひとつ美術の花が咲く―
芦屋市立美術博物館 令和5年度芦屋市内遺跡発掘調査速報展
芦屋市谷崎潤一郎記念館 文豪の愛着~谷崎が愛した小物たち~
芦屋市谷崎潤一郎記念館 林理恵 陶展~蓮のある風景~
兵庫県立美術館 描く人、安彦良和
兵庫県立美術館 コレクション展Ⅰ
京都府立京都学・歴彩館 スポットライト-今、ミュージアムが光を当てたい逸品展-
千總ギャラリー ためつすがめつ屏風
千總ギャラリー あなたと絵の話、交差点 (The only thing I did)
建仁寺 生誕100年記念 小泉淳作
京都蔦屋書店 橋爪悠也個展「LISTEN TO THE SONG OF COLORS -色の歌を聴け-」
京都蔦屋書店 X Beyond O2O2V
京都蔦屋書店 小澤香奈子個展「しろくゆらす」
京都蔦屋書店 隗楠個展「Exploring」
京都蔦屋書店 粂原愛個展「静寂の聲」
京都蔦屋書店 小島拓朗個展「evokes」
国立文楽劇場資料展示室 文楽で学ぶ なまず西遊記
髙島屋史料館 富岡鉄斎「贈君百扇」ー君に百扇を贈るー
大阪中之島美術館 滑らかなオントロジーと共鳴するオブジェクト:物化する計算機自然・微分可能存在論における密教世界
大阪大学中之島芸術センター 天然表現「投錨するアート」展
阪神梅田本店 楽園~Paradise Garden
阪神梅田本店 ~高精彩で魅せるイラスト展~ エール!イラストレーターズ 2024 OSAKA ステージⅡ

 

 

告知されてからずっと楽しみにしていた巨大ロボット群像展に行った。昨年9月の福岡市美術館から横須賀美術館高松市美術館と巡回し、ようやく関西の京都文化博物館へ回って来た。京都工芸繊維大学の博覧会展に行きたかったので、京都市営地下鉄の一日乗車券を有効活用できるルートを考え、まず博覧会展に行き、南下しつつ数ヶ所巡って最後に巨大ロボット群像展を見ることに。初めて訪れた中信美術館の道中、たまたま見学日だった京都府庁旧本館で旧議場や旧知事室といった建築を楽しみ、京都文化博物館に辿り着いたのは15時半頃。会期初日で混雑して展示を満足に見られない可能性を危惧していたが、時間帯もあってか困る程には混んでいなくて安心した。

お台場の実物大ガンダムをはじめとする、巨大ロボットを実際に建造したプロジェクトの映像から展示は始まった。最初の展示エリアは鉄人28号のメディアミックス史。原作マンガに始まり、アニメに先駆ける実写ドラマ版、テレビアニメ3作品に劇場アニメに実写映画まで、解説の記された柱が立ち並ぶ。全然世代でも無いのにこの段階で気分は一気に高まり、次のエリアのマジンガーZの詳細な解説パネルを見てわくわくしていた。光子力研究所の断面図にパイルダーオンしてマジンガーZとなる過程、作劇上の合理性の紹介と、マジンガー関係なくロボット作品として説明を読むのが楽しかった。鋼鉄ジーグコン・バトラーV勇者ライディーンゲッターロボと、最初期のロボットアニメ作品の解説が続く。マジンガーレベルに気合が入った解説をされている作品は他に無くて少し残念。ぐるっと回ってスタジオぬえのコーナーへ。ゼロテスターや、有名シリーズとなったマクロスの展示の後、ハインラインSF小説『宇宙の戦士』に登場する機動歩兵のイラストが展示されていた。スタジオぬえ宮武一貴と加藤直之によるこの機動歩兵は、原書に無いパワードスーツのデザインで後のアニメやマンガに大きな影響を与えたらしい。パワードスーツのサイズ感を体感できるちょっとした展示もあり、ただのロボットアニメ列挙に終わらない展示を見られたのは嬉しかった。最初期ロボットアニメ作品が切り開いた想像性と合理性に焦点を当てたエリアの後は、ロボット作品の実際のサイズを体感できる展示が続く。ルパン三世に登場した巨大ロボットのラムダ、ダグラムボトムズザブングルメガゾーン23と、作中ロボットのサイズを再現したパネルが展示され、大きさをある程度イメージできる。数十メートル級のいわゆるスーパーロボットはわからないものの、比較的小さめのロボットは大体これぐらいのサイズかと想像して面白かったが、展示スペースの問題か、立った姿で大きさを実感できる機体があまり無くて残念だった。次は精緻に描かれるようになっていったロボットの内部機構に関する展示。プラモデルやおもちゃが展開されていく中で機体の内部機構を解釈してデザインするようになっていき、アニメでも合体シーンを描く中で内部機構が見せられるようになっていく。トップをねらえ!勇者シリーズの合体シーンをいくつも繋げた映像を鑑賞できるスペースがあり、やはりロボットの合体シーンは良いなと思いつつ、アニメーターの苦労が偲ばれた。

下の階に降りる。この巡回展の目玉である、18mのガンダムが床に描かれ、その大きさを感じられる部屋に来た。元々の展示構成ではスタジオぬえエリアの次にこの部屋が来るはずだったが、会場の都合でそうもいかずに別の階になったらしい。この展示スペースを確保するため、会場の広さを考慮して展示構成をどうにかしなければならないのも大変だ。床のイラストを見せる都合上、デカい部屋が必要な一方で壁側にしか展示を置けないし。見た目のインパクトはあるものの、大きさのイメージはできるそうであまりピンと来なかった。ガンダムの初期設定画からのデザインの変遷と、セルアニメとしていかにリアリティを追求したかの展示を見て、最後にあったのは90年代ロボットアニメのコーナー。現実離れしたデザインながら機体設定が練られ、個性的な物語を紡いだ、ジャイアントロボガオガイガービッグオー、ゲキ・ガンガー3、ダイ・ガードの5作品の展示。ナデシコだ、やっと観たことのある作品が来たと思ったら、作中作のゲキ・ガンガー3の話しかしていなくて笑ってしまった。ジャイアントロボはアニメ映像が流され、実際にロボットが動いて戦っている所を観られたのが良かった。会場の動線など色々な課題はあると思うが、「巨大ロボットとは何か?」というテーマからしても、もっと色々な作品のロボットが動いている場面が見たかったところ。映像カットだけではどうしても限界がある。どの辺りの時代まで展示されているのだろうと思ったら、90年代で終わって消化不良気味なのも少し残念。展示の中で一番新しい作品は2012年公開の『花の詩女 ゴティックメード』か?不満はあるものの、ロボットアニメに関する展示をこれだけ観られたのは間違いなく楽しかった。古典と言える昭和のロボットアニメを観てみたくなった。

 

 

7月に読んだ本のまとめ

 

白鳥士郎りゅうおうのおしごと!』19巻
豊永浩平『月ぬ走いや、馬ぬ走い』
二月公『声優ラジオのウラオモテ』11巻
二月公『声優ラジオのウラオモテ DJCD』
八目迷『ミモザの告白』5巻
原田マハ『板上に咲く』

大澤夏美『ミュージアムと生きていく』
奥野武範『常設展へ行こう!』
国立科学博物館筑波実験植物園編著『植物園へようこそ』
鈴木均『自動車の世界史 T型フォードからEV、自動運転まで』
原田裕規『とるにたらない美術 ラッセン、心霊写真、レンダリング・ポルノ』
藤木和子『「障害」ある人の「きょうだい」としての私』

 

 

学芸員に常設展の魅力を聞いてみた『常設展へ行こう!』が良かった。東京国立博物館に始まり、国内の12の美術館について各館の学芸員が収蔵作品への愛を語っていく。四六判の2段組で数十ページに渡って設立経緯やコレクション方針、オススメ作品が語られ、インタビュー形式なのもあってそこそこの文量ながら楽しく読み進められた。東京の美術館ばかりではなく、青森県立美術館富山県美術館、群馬県立館林美術館など比較的なじみの薄い館のことも知ることができた。著しく混雑する企画展も珍しくない中、結構良い作品をじっくり鑑賞できる常設展にもっと行きたくなった。大阪市立美術館は来年3月まで休館中、国立国際美術館は展示室内整備のためコレクション展はやっておらず、大阪中之島美術館は常設のコレクション展を開催していなくて、大阪府下は鑑賞できる場所があまり無いが。先月読んだ後藤さおり『日本のミュージアムを旅する』も収蔵品に注目して美術館を紹介していく本だった。こちらは少ないページ数ながら日本全国の国立/公立美術館を取り上げていて、浅く広く全国の美術館を知って美術旅気分になれる一冊だった。もっと色んな美術館に行きたい。

6月のまとめ

6月に行った展覧会のまとめ

 

御殿山生涯学習美術センター 「大阪美術学校創立100年記念」 開校記念展
京都市立芸術大学芸術資料館 「日本最初京都画学校」-京都御苑からの出発-
京都市立芸術大学アートスペースk.kaneshiro 源平合戦図屛風ー其の壱 いざ参らん、一の谷の戦いへ!
京都蔦屋書店 コケシスキー個展「時間と積層 -Time and Deposition-」
京都蔦屋書店 熊野海個展「MAGICAL UNIVERSE
京都蔦屋書店 やまなかともろう 個展「金色掻き分け流るる乙女」
京都蔦屋書店 長嶋祐成「川」展
京都蔦屋書店 ミシオ個展「星座と/は違う/手(サースカムスタンス)」
大阪髙島屋 写真家 砺波 周平×HIDA~森の声をきく~
大阪髙島屋 小島久典展 Flumen Temporis~時の河
髙島屋史料館 「人間 栖鳳」 生誕160年 知られざる竹内栖鳳
大丸梅田店 Upcoming Artists
大丸梅田店 岡本太郎コレクション展
阪急うめだ本店 Osaka Art & Design 2024「『阪急×Art Collectors’』アートフェア2024」
阪急うめだ本店 Osaka Art & Design 2024「ヘラルボニーアートコレクション」
心斎橋PARCO ART SHINSAIBASHI
大阪企業家ミュージアム 企業家たちの珠玉の名言とゆかりの品
適塾

 

 

行ったことの無い場所でやや興味の惹かれる展覧会が開催されることを知り、おそらく人生初の京阪電車に乗って枚方市の御殿山まで行ってきた。駅を出て踏切を渡ると緩い上り坂で、少し歩いて生涯学習美術センターはこちらという看板を見つけて左折するとさらなる急坂で、入口に辿り着く頃には息が切れていた。後でアクセス情報を確認したら、急な坂道だけど近道をしたい方向けのルートだったらしい。目的の展覧会は大阪美術学校創立100周年記念展で、施設受付前のちょっとしたギャラリースペースで関係者の写真や絵画作品が展示されていた。恥ずかしながら大阪美術学校は存在すら知らず、設立に中心的な役割を果たした矢野橋村も名前しか知らなくて、ちょっと前に池田市の歴史資料館で矢野橋村展をやっていたなあ、行けばよかったと少し後悔しながら作品を見た。個々の作品よりも、大阪美術学校設立にあたって矢野橋村が述べた言葉の中にあった、「大阪と言ふ處は美術家を殺しこそすれ育てる處ではない」と人々の間で言われるようになり、そう感じた芸術家が大阪から次々に離れて美術畑が荒廃していたという状況に、近年の色々なニュースを思い出して悲しくなった。展示を変えて別会期の展覧会が続くらしい。

京阪電車で京都に向かい七条駅で降りて京都市立芸術大学芸術資料館へ。道中で石清水八幡宮京都競馬場京阪電車の沿線にあること知る。京都競馬場淀駅を通過する時に大きな施設やコースが車窓から見え、昔行った東京競馬場を思い出して気分が盛り上がっていた。京都市芸大では移転記念特別展「京都芸大<はじめて>物語」2期目を鑑賞。今回は美術教育用の絵手本や参考資料に使われた中国絵画などが展示されていた。日本初の公立美術学校として京都府画学校が設立されるに当たり、幸野楳嶺が絵画は図面を描くのに有用で諸産業の基本だと設立意義をアピールしていた所に、当時の美術に対する世間の眼と実学への志向が窺えて面白かった。時代の下った大阪美術学校の設立への思いを読んだ後で見ると、美術というか画家についての社会の見方の変化を感じる。展示を見た後は6階のアートスペースで源平合戦図屏風を見て、京都髙島屋まで歩き、蔦屋書店の展示をぐるっと周って一日が終わった。

 

 

6月に読んだ本のまとめ

 

伊良刹那『海を覗く』
八目迷『小説葬送のフリーレン~前奏~』

青木耕平、加藤有佳織、佐々木楓、里内克巳、日野原慶、藤井光、矢倉喬士、吉田恭子『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』
奥野克巳監修『世界ぐるぐる怪異紀行 どうして”わからないもの”はこわいの?』
尾崎俊介アメリカは自己啓発本でできている ベストセラーからひもとく』
後藤さおり『日本のミュージアムを旅する』
篠田謙一『科博と科学 地球の宝を守る』
谷口功一『日本の水商売 法哲学者、夜の街を歩く』
田豊隆『妻はサバイバー』
町田明広編『幕末維新史への招待』

アイナール・トゥルコウスキィ『おそろし山』

 

 

TLに流れてきた「アメリカ文学・文化について考えるための読書・動画ガイド」を読み、アメリカ文学の最新動向を知りたくて『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』を読んだ*1。2020年刊行でここ数年の情勢は当然無いものの、8人の執筆者がそれぞれの関心に沿って割と好きに近年の作品を紹介していく本で、最後には柴田元幸も交えた座談会が収録されている。必ずしも小説ばかりではなく、ドラマやグラフィックノベル、作家ワークショップの体験談に文芸翻訳と射程は幅広く、新たな作品を知るだけにとどまらず、今のアメリカ社会で問題とされ議論されていることが伝わってきて、どの記事も面白かった。インドで起きた2つの爆弾テロ事件を下敷きに、生き残ったテロ被害者がテロ幇助者に、子を失ったリベラルな母親が死刑支持者に変わるなど、テロが人をいかに変えていくかを描いたカラン・マハジャン『小さな爆弾たちの連合』。順調な来歴の人生を歩むも、既に確定した絶望から「よくなる」ことを期待せず、最後まで救いの訪れない男を描くハニャ・ヤナギハラ『あるささやかな人生』。当事者によって執筆され、トランス女性の直面する生活上の問題が散りばめられたメレディス・ルッソ『If I Was Your Girl』。他にも興味が湧いて読みたくなった小説はあったが、挙げた3作品も含めて邦訳が刊行されていない物が結構あった。英語ででもどうにか読みたいなと思ったものの、ハニャ・ヤナギハラの『A Little Life』(上記の『あるささやかな人生』)が700ページ超えなのを知って尻込みしてしまった。とりあえず、同作者で邦訳のある『森の人々』を読むつもりだ。

*1:冨塚亮平researchmap
https://researchmap.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/295568/3f01747097d167382db05220a8cbfaf9?frame_id=656319
「これから人文科学について学ぶ人のための読書・動画ガイド」も公開されている