4月に行った展覧会のまとめ
移住ミュージアム
神戸市立博物館 Colorful JAPAN―幕末・明治手彩色写真への旅
KOBEとんぼ玉ミュージアム Art Marble 2024
京都国立博物館 特別展 雪舟伝説―「画聖」の誕生―
京都市立芸術大学芸術資料館 カイセン始動ス!−京都市立絵画専門学校に集いし若き才能—
京都市立芸術大学アートスペースk.kaneshiro 美工・絵専時代の上村松篁ー若き日の異色作をめぐって
京都工芸繊維大学美術工芸資料館 受け継がれるイメージ-源氏物語の世界
京都工芸繊維大学美術工芸資料館 建築アーカイブズをひらく Vol. 1―愛仁建築事務所資料
京都工芸繊維大学美術工芸資料館 建築設計実習IV 歴史グループ アーカイブズ課題 2023年度成果展:比叡山回転展望閣
京都工芸繊維大学美術工芸資料館 フランスポスター展-ロートレックからムルロ工房、サヴィニャックまで
大谷大学博物館 大谷大学のあゆみ 赤レンガの学舎
ハリス理化学館同志社ギャラリー 同志社大学同志社社史資料センター開設20周年「同志社の家計簿―同志社のあゆみを支えた財政の記録―」
京都市考古資料館 紫式部の平安京-地中からのものがたり-
千總ギャラリー 変化が導く —検討のち、変更
京都芸術センター 林智子個展「そして、世界は泥である」
竹尾淀屋橋見本帖 マンガアートをつつむ Shueisha Manga-Art Heritage×紙×加工
阪神梅田本店 高田明美展
阪神梅田本店 とけし作品展「凛々しくて儚い」
阪神梅田本店 chikame 初個展「miss you」
京都国立博物館へ朝から雪舟展を見に行った日、京都市営地下鉄1日乗車券を有効利用できないかと考え、大学ミュージアム巡りをすることにした。初乗り運賃が220円で1日券は800円なので、数回下車すれば元が取れる。
まずは京都国立博物館から歩いて京都市立芸術大学芸術資料館へ。京都駅近くに大学が移転した記念の特別展が開催中で、同大学の前身校で学んだ芸術家たちの卒業作が今年4月から来年2月にかけて4期に分けて展示される。第1期の今回は村上華岳、土田麦僊、堂本印象など名前をたまに見る画家の初期作を鑑賞したが、目を奪われたのは岡本神草の《口紅》だった。他と違って明らかに見覚えがある作品で、卒業作だったのかと驚く。早世したという説明文を読み、卒業作が代表作として今に伝わっていることに悲しさを覚えた。展示の一番最後に、数ヶ月前に奈良県美に展覧会を見に行った不染鉄の作品があり、日本の原風景のような絵画に再会できたのは嬉しかった。
京都駅まで歩いて地下鉄で一気に北上し、京都工芸繊維大学の資料館へ。1日券を使おうと思った理由の一つは、ここで開催中の展示を見たかったから。松ヶ崎駅を出ると樹々の緑が目に入ってきて、中心部から離れたのを実感する。この辺で曲がれば着くだろうと雑に歩いたために小さな入口からキャンパスに入ることになり、美術工芸資料館を少し探すことになった。200円を払って入館すると、ホールの壁に時代を感じるポスターが何枚も展示されており、中央の空間に建築図面が展示されていた。入って右手の部屋の源氏物語の展示、ホールの設計図面の展示、奥の部屋の建築設計実習展を見て2階へ。メインの展示に辿り着くまででも盛り沢山だ。ようやく主目的のフランスポスター展を鑑賞。ロートレックやミュシャなどの華やかなポスターから、ピカソやシャガールなど画家自身が手掛けた展覧会ポスター、ロジェ・ブゾンブのカラフルなエールフランスのポスター、サヴィニャックのユーモアな発想の広告ポスターまで。華やかで美しい方向から、見て面白い方向へのポスターデザインの変遷を感じる。無料で貰える過去の展示パンフレットが受付の棚に並んでいたので、興味を引かれた物と資料として手元に持っておきたい物を7冊貰った。結構重くて移動しまくる一日には邪魔だが、折角ここまで来たのだから貰える物は貰っておきたい。
南下して北大路駅。地図アプリを見ながら大谷大学を探して歩き出したが、違う方向へ進んだと気づいて駅に戻ったところで、駅出口の真向かいの建物の上部に大谷大学の文字が見えた。博物館は横断歩道を渡ってすぐの建物内にあった。かつて大谷大学の本館だった赤レンガの建物と大谷大学の建学精神に関する展示。初めて来た大学で建物に思い入れが無いのでざっと見た。北京版チベット大蔵経のチベット語が綴られた横長の紙のレイアウトを見て、なるほど縦書きの日本の経文と違って横長の紙と箱で縦開きになるのかと面白く感じた。
また2駅進んで今出川駅。ハリス理化学館同志社ギャラリーの展示を見る。同志社の財政記録という来る前はあまり興味の無かった展示だが、アメリカからの寄付が財政の大部分を占めていた初期の同志社は、外国資本が流入し外国の影響力が及ぶ学校として政府に警戒されており、構造改革の果てに徴兵猶予などの特典をなんとか獲得したという歴史は興味深かった。その後は少し歩いて京都市考古資料館へ。ここも1日乗車券を使った理由の一つ。特別展は紫式部や藤原氏に関する遺跡の発掘資料から平安時代の貴族の暮らしを解説した展示で、『源氏物語』に登場する邸宅はこの辺りで……と同作と絡めた説明書きが印象的だった。2階の常設展示は京都の歴史を考古資料から見る展示だったが、朝から方々を巡った疲れであまりじっくり見られず。
その後は烏丸御池駅から歩いて千總ギャラリーと京都芸術センターの展示を見て、ポケモンセンターと本屋に立ち寄って帰りの電車に乗った。まだまだ行けていない大学ミュージアムが京都にはある。いつか行ってみたい。
4月に読んだ本のまとめ
九段理江『東京都同情塔』
竹町『スパイ教室短編集』5巻
砥上裕將『一線の湖』
三木三奈『アイスネルワイゼン』
ベンハミン・ラバトゥッツ『恐るべき緑』
加藤文元、岩井圭也、上野雄文、川上量生、竹内薫『人と数学のあいだ』
河野真太郎『正義はどこへ行くのか 映画・アニメで読み解く「ヒーロー」』
児玉真美『安楽死が合法の国で起こっていること』
山梨俊夫『カラー版 美術の愉しみ方 「好きを見つける」から「判る判らない」まで』
近畿圏在住で18歳以上なら登録できると知り、大阪公立大学図書館の一般利用者登録をした。2年間有効で2000円。住吉区の杉本図書館と堺市の中百舌鳥図書館で館内資料を閲覧・複写できるほか、データベース閲覧と各館5冊まで資料の貸出ができる。母校の大学図書館には卒業生用入館証でたまに行ったが、館内資料の閲覧と複写しかできなかったので、資料を借りられるのにはかなり驚いた。研究者でもない人間が10冊も本を借りられるのはありがたい。どちらの館も行ったが、蔵書数200万冊を超え、地上10階・地下3階の杉本図書館はうろうろするだけでもすごさを感じた。登録した以上は2年間有効利用したい。
月末に読んだ『恐るべき緑』が良かった。科学の常識を塗り替えた名だたる科学者たちを描いた短編小説集。ハーバー、シュヴァルツシルト、グロタンディーク、ハイゼンベルク、ド・ブロイ、シュレーディンガーと、有名科学者の業績や発見の裏にあるエピソードが苦悩や執念と共に綴られていく。科学者の熱情と偏執さにより科学の世界認識が変わる衝撃が描かれる一方で、合間で2つの世界大戦が落とした影が描かれ、その人間の業が有名人の評伝ではない最後の一編に繋がっていく。ナチス高官の自殺に青酸カリが用いられた話から始め、大戦末期のドイツでの自殺の波、強制収容所での毒物、青色顔料の歴史、チューリングの自殺、第一次大戦のイーペル、そしてドイツのフリッツ・ハーバーで話が終わる最初の一編「プルシアン・ブルー」が、話がどんどん別の話に繋がって展開していって面白かった。科学知識がある状態で読むともっと面白かっただろうなと感じてしまうのが悲しい。