2月のまとめ

2月に行った展覧会のまとめ

 

中之島香雪美術館 館蔵 刀剣コレクション 刀と拵の美
民音音楽博物館西日本館
関西国際文化センター 挿絵でたどる『新・人間革命』名場面展――創価教育編
神戸市立博物館 コレクション大航海 蝦夷発→異国経由→兵庫行
felissimo chocolate museum 甘すぎるドレス展 with me
felissimo chocolate museum アリカワコウヘイ!展 マシューくんのチョコレートパーク
神戸海洋博物館 第22回帆船模型教室作品展
カワサキワールド    
大阪歴史博物館 描かれた人たち-尊崇・憧憬・追憶-
大阪府立中央図書館 アート魚拓の世界
あべのハルカス美術館 円空―旅して、彫って、祈って―
あべのハルカス近鉄本店 宮本大地「ガジェット」
あべのハルカス近鉄本店 アートフェスティバル2024 
大阪中之島美術館 Osaka Directory 6 supported by RICHARD MILLE 木原結花
阪神梅田本店 lack大阪個展「CAFE coffee gentleman」

 

 

月の始め頃に三宮の海側のミュージアムをぐるっと周った。一度だけ神戸市立博物館に行ったのを除くと、神戸市内でも兵庫県立美術館より西に行ったことが無く、中心部の三宮まで訪れたことは無かった。今回は神戸三宮駅を起点に海の方へ進み、民音音楽博物館西日本館、神戸市立博物館、フェリシモチョコレートミュージアム、神戸海洋博物館&カワサキワールドと巡り、閉館時間の都合で行ける場所がほとんど無くなったところで駅へ戻り帰路についた。ちょうど春節だったのに中華街に立ち寄らなかったのは少しもったいなかったかもしれない。

神戸行きの主目的は神戸市立博物館の「コレクション大航海 蝦夷発→異国経由→兵庫行」。海をテーマとしたコレクション展で、古地図から蝦夷、美術品から江戸の異国趣味、考古・歴史資料から兵庫津を紹介する3章に分かれた展示。昼過ぎに入館すると、神戸市のマスコットキャラクター、かもめんが来館していた。折角なので写真を撮るとポーズをしてくれた。中央区のキャラらしい。受付で入館券を購入する際、ずらっと並んだ割引の中にマイナンバーカードでの入館割引が目に付いた。マイナンバーカードで博物館の入館料が安くなるのを初めて見た。

3階に上がってまずは蝦夷地に関する展示を見た。地図を使った前近代の展示ではおなじみのオルテリウスの世界図に始まり、国内外の古地図を展示しながら、蝦夷地という地域が国内外でどのように地図に描かれ認識されてきたかを当時の情勢と共に解説した展示。初めて蝦夷地が地図上で記録されてから、樺太蝦夷地が合体した謎の巨大な土地ととして地図に現れ、探検が進んで樺太蝦夷地が分離されてからも蝦夷地を現在の形のように把握される地図になるまで、蝦夷地に対する世界の認識がこうやって変遷していったのかと興味深かった。すぐ近くの日本国内ですら、渡島半島以北の土地や内部の地名が把握されたのは江戸期に入ってからで、幕府が初めて蝦夷地探検隊を派遣したのは18世紀末だったという。樺太東岸の確かな情報を得たかった高橋景保クルーゼンシュテルンの『世界周航記』を望んだことがシーボルト事件の一因という話を読みながら、正確な地図によって地域をきちんと把握していくことがいかに重要だったかを強く感じた。

2階に降りて江戸時代の異国趣味の展示室へ。当館は池長孟が寄贈した南蛮美術コレクションがあり、教科書でもおなじみの《聖フランシスコ・ザビエル像》を常設展示で専用展示室内で鑑賞できる(本展の後、常設展示ゾーンで複製品を鑑賞した)。2つ目の展示室では、黄檗僧によってもたらされた作品や清の画家を学んだ日本人による絵画、南蛮文化から生まれた工芸品、西洋の画法を受けて新たな方向を開こうとした日本の絵画、ヨーロッパの陶磁の影響を受けた陶磁器、西欧への輸出用に作られた漆工芸品と、江戸時代の美術品と聞いて通常想像する物とは異なる作品に溢れていた。能の楽器の意匠に大胆に鉄砲をあしらった《蒔絵鉄砲文大鼓胴》が印象に残る。異国から伝わった兵器たる鉄砲が日本の能で音を響かせる鼓にデザインされる、その意外さと予想以上のマッチ具合が衝撃的だった。

奥に進んで最後の展示室の兵庫津の展示を見る。一応ざっと目を通したものの、兵庫津についての基本情報や土地勘の無い状態で地図や文書を読んでもあまりピンと来なかった。1階の神戸の歴史展示室を先に見ておけばよかったかもしれない。港としての繁栄は各資料から窺えたが、それを神戸という地域と結びつけて歴史を感じられるほどには至らず。そして、この日は新規開拓するミュージアムを巡ることを優先して1階の歴史展示室をじっくり見る時間は無かった。尻すぼみな感想になったが、この後に周った常設展示室も併せて楽しい博物館体験だった。次回の幕末・明治手彩色写真も面白そうなので、また春にでも訪れたい。

 

 

2月に読んだ本のまとめ

 

竹町『スパイ教室』11巻
永井みみ『ジョニ黒』
八目迷『ミモザの告白』4巻
葉山博子『時の睡蓮を摘みに』
原田マハ『黒い絵』

大阪歴史博物館監修『近代大阪職人図鑑 ものづくりのものがたり』
国立科学博物館編著『〈標本〉の発見 科博コレクションから』
住吉雅美『ルールはそもそもなんのためにあるのか』
樽本英樹『国際社会学・超入門 移民問題から考える社会学
東京造形大学附属美術館監修、藤井匡編『美術館を語る』
日本史史料研究会編『日本史のまめまめしい知識 第1巻』
穂村弘『よくわからないけど、あきらかにすごい人』
ジョナサン・マレシック『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか バーンアウト文化を終わらせるためにできること』

 

 

𝕏で流れてきた舞台設定などに興味を持って『時の睡蓮を摘みに』を読んだ。日中戦争の開戦直前期にハノイへ渡って大学で学び始めた日本の女学生を軸として、戦争の中で変わりゆくハノイと人間模様を描いた長編小説。フランスの植民地として搾取されている現実がある一方、パリとはまた違った風景の中で華やかに生きる人々。海外展開する日本企業の社員、進駐してくる日本軍、植民地で裕福な暮らしをするフランス人、現地や近隣国の人々。先月読んだ川越宗一の『福音列車』もだが、戦前の植民地時代における国際色の豊かさとその中での階層差を実感する。日仏中の思惑が入り乱れる中で各人の運命は如何に……と展開が気になりつつ、ベトナムという地域の空気を感じながらどんどん読み進められる物語だった。読んだ後、フランス語文献も含めて参考文献が数ページに渡って載っているのに圧倒される。アガサ・クリスティー賞大賞受賞作だが、そこまでミステリ要素を強く感じることは無かった。