1月のまとめ

1月に行った展覧会まとめ

 

大阪中之島美術館 すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合
国立文楽劇場資料展示室    文楽の花鳥風月
国立文楽劇場資料展示室    曽我廼家五郎 ―「喜劇」の誕生
髙島屋史料館 1909 現代名家百幅画会
山王美術館 山王美術館 ベストコレクション展
心斎橋PARCO ART SHINSAIBASHI
大丸心斎橋店 ニック・ウォーカーと現代アート

 

 

寒さと怠惰で出不精気味の月だった。三が日に開館している珍しい美術館の大阪中之島美術館で1年のスタートを切ったが、それ以降は外に出る機会が減った。今月はこの月初めの具体展が一番印象に残っている。文脈不明ながら、作品それ自体として何か心を揺り動かす力を作品に感じた。作品という物自体でぶつかる具体の在り方が時代の産物のような気もしたが、今でも力を感じさせられるのはやはりすごいと思う。移転オープン以来、ずっと行けていなかった山王美術館に行けたのも良かった。来月以降の展覧会で興味があるのは、兵庫県立美術館の恐竜美術展。19世紀の復元図から20世紀の絵画作品、サブカル領域の作品から最近の研究に基づく現代の作品まで、恐竜のイメージの歴史と言える物が体験できそうで、会期は3月からだが楽しみにしている。

 

 

1月に読んだ本まとめ

 

岩城けいサンクチュアリ

全国昆虫施設連絡協議会『昆虫館はスゴイ! 2』
中西嘉宏『ミャンマー現代史』
新見隆『時を超える美術 「グローカル・アート」の旅』
矢萩多聞、つた『美しいってなんだろう?』

エドワード・ゴーリー『オズビック鳥』

 

 

昼寝など眠っている時間が増えたせいか、大して本も読めず。読めそうで手が動かなかったり、頭が働いていなくて文字が入ってこなかったり、本を開いて読み進めることがあまりできなかった。そんな状態ながら、世界文学全集の『ブリキの太鼓』を読み始めた。玉ねぎの皮をむくたびにギュンター・グラスを思い出していたので、いい加減読もうと図書館から借りてきた。1日20ページ程度で1ヶ月で読み終える計算をしているものの、早くも数日読めていない日が生まれてしまった。今年は古典も読んでいく年にしたい。

12月のまとめ

12月に行った展覧会まとめ

 

狭山池博物館 大阪狭山市の歴史文化遺産 今に伝わる地域のたからもの
狭山池博物館 令和4年度選奨土木遺産パネル展
堺市博物館 堺と武将 三好一族の足跡
箕面市立郷土資料館 カフェーパウリスタ箕面
大阪大学総合学術博物館 MOU収蔵品展-創立からもう20年-
大阪府中之島図書館 文化庁メディア芸術祭大阪中之島
ジーストア大阪 ドキドキ★ビジュアル★展覧会2022
河内長野市立ふるさと歴史学習館 皇女八条院の庭~中世が息づく高向~

 

 

会期の終わりが迫る中、阪大博物館の展覧会と中之島図書館の文化庁メディア芸術祭に行けたのが嬉しかった。阪大博物館の収蔵品展では、普段表に出ていない絵画や演劇関連資料が展示され、大学博物館が持つ資料の幅を感じられたのが興味深かった。学生が組み立てた展覧会を目にした経験がほとんど無かったため、博物館実習などの講義での作成チラシや、その際の展示資料が展示されていたのも面白かった。そういうタイプの展示を今まで見ようとは思わなかったが、その館が持っている物から何を選んで見せようとするかの過程の中で、普段見ないような物が見られるかもしれない。

文化庁メディア芸術祭中之島展は、大阪という場で文化庁メディア芸術祭の受賞作品が見られる事実だけで喜んでしまった。東京に居た頃に目にした作品が多く、目の前にある現在の展示という文脈では無く、その作品から想起される思い出に浸る時間を過ごしてしまった。大阪という文脈からのテーマごとの展示だったが、こじつけのように感じる作品もいくつかあり、新鮮さも納得感もそこまで感じなかったのだと思う。文化庁メディア芸術祭も終わってしまったが、個人的には自分の手の届く中に無かった物を知ることができる貴重な場だったとは思う。バンド・デシネやグラフィックノベルといった海外マンガを漁って読むきっかけになっただけで十分意味はあった。

大阪内での展覧会を探していた去年より、少しだけ行動範囲が拡がった一年だった。来年もよろしくお願いします。

 

 

12月に読んだ本まとめ

 

岩城けいさようなら、オレンジ
河﨑秋子『清浄島』
グレゴリー・ケズナジャット『鴨川ランナー』
澤大知『眼球達磨式』
竹町『スパイ教室短編集』3巻

及川順『非科学主義信仰 揺れるアメリカ社会の現場から』
鎌田真弓編『大学的オーストラリアガイド こだわりの歩き方』
鎌田雄一郎『雷神と心が読めるヘンなタネ こどものためのゲーム理論
オリガ・グレベンニク『戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々』
佐藤圭一、冨田武照、松本瑠偉『沖縄美ら海水族館はなぜ役に立たない研究をするのか? サメ博士たちの好奇心まみれな毎日』
奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』

 

 

オーストラリアの大都市の多くに河川が流れている地理的な話に興味を惹かれ、Googleマップで確認しながら『大学的オーストラリアガイド』は一気に読み終えてしまった。そこから岩城けいの小説を読んでオーストラリア熱は一旦治まり、読みたかった本を読んでいった。

礼文島エキノコックスと戦った研究者を描く小説の『清浄島』と、水族館における研究の側面を取り上げた『沖縄美ら海水族館はなぜ役に立たない研究をするのか?』が、それぞれ研究者の異なる側面を描いていて興味深かった。道立衛生研究所の研究者として、外からの来訪者の立場として離島社会に入り、公僕としての役目を果たそうとする『清浄島』。研究者でありながら公務員として、残酷な業務でも果たさなければならなかったり、地域に根を下ろさない公務員として地域で根回しをしたりする描写が印象的だった。『沖縄美ら海水族館はなぜ役に立たない研究をするのか?』は、世間的にエンタメ評価の勝りそうな水族館で、飼育する生き物の論文を執筆して発表していくことの意義が述べられていた。調査や観察の難しい海洋生物という研究対象に対し、年中観察できるという水族館故の強み。研究をしている水族館だからこそできる、ありきたりではない情報の展示。映える水族館が話題になる一方で、多忙な水族館職員であっても研究者として生きることの大切さが強調されていたのが心に残っている。

11月のまとめ

11月に行った展覧会まとめ

 

大阪市立自然史博物館 田中秀介展:絵をくぐる大阪市立自然史博物館
大阪商業大学アミューズメント産業研究所展示室 20世紀のボードゲーム-創設20周年を回顧して-
大阪商業大学商業史博物館 河内の豪農と文化的ネットワーク―今米村 中家の学芸事情―
サクラアートミュージアム 大正・昭和の巨匠たちが描いたクレパス画~個性が映える描画材料~
大阪府中之島図書館 博覧会の展覧会Part3「太陽の塔が見た未来」
當麻寺中之坊霊宝殿 秋の寺宝展
葛城市相撲館
香芝市二上山博物館 鋳物師の里 五位堂 藤原定次-津田家の新発見資料からー
髙島屋史料館 画工画 明治の画工、世界に挑む
なんばマルイ FUN’S PROJECT CREATORS GALLERY
大阪髙島屋 SPIRAL Creators File 生きるかたち
大阪歴史博物館 大阪近郊の農業―農具とわざの諸相―
大阪歴史博物館 刀剣~古代の武といのり~
ピースおおさか大阪国際平和センター 大阪の平和資料館
大阪企業家ミュージアム 商都大阪の再生に挑んだ五代友厚と同志 広瀬宰平、藤田伝三郎
大丸心斎橋店 吉島信広立体作品展-燦爛百獣―/松本侑也展-タテモノビト-

 

 

ボードゲーム展を見に大阪商業大学の博物館へ訪れた日が印象的だった。今回は2度目になるが、初めて行った時にはゲームの常設展示室の存在に驚いたことを覚えている。チャトランガや麻雀、大局将棋など、古典的な卓上ゲームがガラスケースにいくつも収められた展示空間。今回は20世紀のボードゲームに絞って時系列順に作品を並べて解説した特別展で、時代背景が窺えるゲームがあったり、ボードゲームの発展史のような物を窺えたりしたのが面白かった。核爆弾を撃ち合うゲームとか、イルミナティを題材としたゲームとか。何より、資料としてボードゲームが保存されており、それが展示されていることに感動していた。遊戯王ポケモンカードの第1弾のパック。ダンジョンズ&ドラゴンズにコズミックエンカウンター。必ずしも博物館所蔵資料では無いが、このようなゲームもパッケージごと保存して未来に遺していくことが行われているのだなと。展覧会の図録を買わなかったことを少し後悔している。

後は當麻寺の絵天井の特別公開ついでに近くの相撲博物館に寄ったり、関西文化の日の無料開館に乗じて久々に大阪企業家ミュージアムやピースおおさかに行ったりした。土俵と桝席があったり、明荷や化粧まわしが展示されていた相撲博物館は、相撲のことをほとんど知らない身でもわくわくする空間だった。詳しい人とまた行ける日が来るといい。

年末年始はあちこち閉まっているはずなので、ぼうっとしていると大してどこにも行かないままに12月が過ぎてしまいそうで怖い。行きたかった龍谷大学の博覧展も行けずに終わってしまった。5月と11月しか開いていない南蛮文化館にも行けなかった。中之島図書館の文化庁メディア芸術祭大阪中之島展、箕面市郷土資料館のカフェーパウリスタ展、大阪大学の所蔵作品展あたりは行きたいところ。ちなみに、東京開催の展覧会だとアクセサリーミュージアムの「いけないのファッション展」と東京農工大学科学博物館の「立体で診る~動物医療と先端技術~」が気になっている。

 

 

11月に読んだ本まとめ

 

青山美智子『マイ・プレゼント』
岩井圭也『竜血の山』
ユーディット・シャランスキー『キリンの首』
宮澤伊織『裏世界ピクニック』7巻

大阪公立大学現代システム科学域編『大学的大阪ガイド こだわりの歩き方』
小田中直樹歴史学のトリセツ 歴史の見方が変わるとき』 
呉座勇一『戦国武将、虚像と実像』
駒込武編『「私物化」される国公立大学
溝手康史『登山者ための法律入門』
渡辺靖アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋』

 

 

読みかけて読み終わらずに図書館に返す本が多い中、昭和堂の大学的地域ガイドシリーズの大阪版が面白かった。奈良版と神戸版は借りたものの土地勘が無さすぎて読み切れずに図書館に返してしまったが、多少なりとも大阪府内をうろうろして展示を見てきたこともあり、『大学的大阪ガイド』は地域的な話にある程度の納得感を持って読めた。自然・人文・社会科学的な大阪の論考がいくつも収められた本で、候補地のたらい回しの末に熊取町に京大原子研ができた話や、大阪万博太陽の塔の展示が後の博物館展示に与えた影響の話などが興味深かった。今は大学的地域ガイドシリーズで唯一の海外編である『大学的オーストラリアガイド』をGoogleマップで調べながら読んでいる。やっぱり土地勘以上に読もうとする意志が大事なのかもしれない。

10月のまとめ

10月に行った展覧会まとめ

 

阪急うめだ本店 英国現代美術の巨匠たち BRITISH CONTEMPORARY MASTERS
兵庫陶芸美術館 北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美
兵庫陶芸美術館 丹波焼の世界season6
阪神梅田本店 棒田和義 陶板アート展
阪神梅田本店 ミニチュア造形の世界 私のハロウィン
阪神梅田本店 イラストレーターのウラバナ!展
世界の貯金箱博物館 “いっぱい貯まるね!!”「特大貯金箱展」
尼信会館 森本紀久子展
尼信会館 廣瀬渓仙 水墨画
尼崎城    現代妖怪百雷乱舞
尼崎市立歴史博物館 初代尼崎市長櫻井忠剛と勝海舟・川村清雄
近江神宮時計館宝物館 各地の弘文天皇大友皇子伝説
大津市歴史博物館 大友皇子壬申の乱
大津市歴史博物館 近江神宮造営史-建築技師大洞藤三郎の設計図面から-
大津絵美術館    
三橋節子美術館    三橋節子が愛した野草たち
大津祭曳山展示館    
大丸京都店 D-art,ART
大林組歴史館 
OSEギャラリー  
杏雨書屋 杏雨書屋の宗教文献─『敦煌秘笈』『磧砂版大蔵経目録』とその周辺
杏雨書屋 流行り病を乗り越えて
住友ファーマ展示Gallery
田辺三菱製薬史料館   
MORISAWA SQUARE 

 

 

週末ごとに丹波篠山、尼崎、大津に行き、最後の週末には生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)で休日特別公開されている企業ミュージアムを目当てに大阪を回った。

丹波篠山では兵庫陶芸美術館へ。昔訪れたことのある北澤美術館コレクションの展示ながら、久々にルネ・ラリックの作品をまとまった数見ることができた。当時はエミール・ガレよりもラリック、いやドーム兄弟作品に惹かれていたような覚えがあるが、生物そのものの生の強さを感じるようなガレ作品の方が今は好きかもしれないと感じた。丹波篠山は田畑の脇に電柱と電線がすらっと立ち並んだ風景もきれいだった。

尼崎は尼崎駅の南部を西から東へ移動した。世界の貯金箱博物館と尼信会館を見学し、寺町を少しだけ歩いて尼崎城に歴史博物館。駅からも見える尼崎城は、コスプレゾーンに武器の体験ゾーンと親しみやすい展示が多い。鉄砲が結構重いことを知る。歴史博物館は学校校舎を展示施設としていて、郷土資料館として思った以上に常設展示がしっかりしていた。災害と公害で展示室を一部屋設けていたのが印象的。

大津は近江神宮に参拝した後、大津京駅から大津駅の間にある施設を時間的に行ける範囲で巡った。壬申の乱から1350年ということで関連展示をいくつか見たが、大友皇子のゆかりの地として遠く千葉県まで伝承が残っていることに驚いた。時間の都合で三井寺に行けず、周る範囲が狭くて市内の歴史スポットをあまり巡れなかったのが心残りなので再訪したいところ。幼少期以来になる比叡山へも是非行ってみたい。

イケフェス大阪は通常だと平日のみ開館の企業ミュージアムを回るのに専念したことで、建築を楽しむことがあまりできなかったのが残念。道修町ミュージアムストリートの医薬系博物館も数ヶ所まだ行けていないし。平日のみ開館と要予約という2つの点で企業系博物館へ行くのを尻込みしているが、関西だけでもまだまだ行っていない場所が多いのでどうにかして行きたいところ。今気になっている展示は中之島のすぐ近くで同時開催されている具体展か。あちこちでやっている三好長慶展も少し興味がある。

 

 

10月に読んだ本まとめ

 

朱白あおい『結城友奈は勇者である 勇者史外典』上下
河﨑秋子『颶風の王』
津村節子『紅色のあじさい 津村節子 自選作品集』

『海洋へのいざない第2版』
五十嵐太郎『誰のための排除アート? 不寛容と自己責任論』
井上奈奈『星に絵本を繋ぐ』
越前敏弥、金原瑞人三辺律子白石朗、芹澤恵、ないとうふみこ『はじめて読む!海外文学ブックガイド 人気翻訳家が勧める、世界が広がる48冊』
佐藤和哉 『〈読む〉という冒険 イギリス児童文学の森へ』
高階秀爾千足伸行石鍋真澄『〈西洋美術史を学ぶ〉ということ』
カルヴィン・トムキンズ『優雅な生活が最高の復讐である』
カトリーン・マルサル『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? これからの経済と女性の話』
ジー『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』
稙田誠『寺社焼き討ち 狙われた聖域・神々・本尊』

荻田泰永『PIHOTEK  北極を風と歩く』
ロマナ・ロマニーシン、アンドリー・レシヴ『戦争が町にやってくる』

 

 

大学で中世の僧兵について少し勉強していたのもあり、稙田誠『寺社焼き討ち』をようやく読めたのが嬉しかった。日本の中世の民衆に見られる、宗教への敬虔な信仰態度と、それに反するような行為言動。神仏を敬い恐れる一方で、寺社の焼き討ちや神仏をけなすこともあった。豊富な事例を分析することで、史料では直接的に見えづらい中世人の宗教的な葛藤や精神を解き明かそうとした一冊。寺社焼き討ちに至る際の様々な方便が面白い。寺社の焼き討ちは園城寺延暦寺の抗争が初期の事例だが、武士ではなく宗教勢力から焼き討ちし史が始まっており、事例を読んでいく限り武士以上に宗教勢力の方が方便の蓄積面でも焼き討ち思想が見えるのが興味深い。個人的な興味は人対神よりは人対人であり、殺生戒ある宗教者の武装や戦闘意識の方を考えてみたい。少し手を出しづらいが、同著者の『中世の寺社焼き討ちと神仏冒涜』もいつかチャレンジしたいところ。

9月のまとめ

9月に行った展覧会まとめ

 

京都市京セラ美術館 綺羅めく京の明治美術ー世界が驚いた帝室技芸員の神業
京都清宗根付館 根付植物園
KITAHAMA N Gallery 漫画とデザイン展
阪神梅田本店 田住真之介日本画
阪神梅田本店 ~キルティングアートによる心象風景画~ 米倉健史作品展
阪神梅田本店 西垣至剛WORLD
阪神梅田本店 イラストクリエーターズmeets[VOFAN・空缶王・LOIZA]
大丸梅田店 画業31年の軌跡―笹倉鉄平100の原画展
兵庫県立美術館 ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵-武者たちの物語
神戸市立博物館    スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち
狭山池博物館 古墳時代導水施設の儀礼
OIT梅田タワー 大阪まちづくりの軌跡と文化~大大阪を中心に~
髙島屋史料館 画工画 明治の画工、世界に挑む
四天王寺宝物館 金剛組四天王寺を支えた宮大工たち―
大阪市立自然史博物館 標本を未来に引き継ぐ~新収資料展2022~
大阪大谷大学博物館 絵から読み解くくらしと文化-平安時代の王朝文化から江戸時代の庶民文化まで-
千總ギャラリー 理外の理
京都dddギャラリー ddd DATABASE 1991-2022
西陣織あさぎ美術館 仏教美術西陣
京都髙島屋 刺繍絵画の世界展 明治・大正期の日本の美
京都髙島屋 技となごみ-木彫秀作展
逸翁美術館 食器愛玩~食を彩る器~
小林一三記念館    
佐川美術館 水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~
佐川美術館 平山郁夫 異文化とのふれあい
佐川美術館 生誕110年 佐藤忠良
佐川美術館 吉左衞門X nendo×十五代吉左衞門・樂直入

 

 

今月は初めて訪れた博物館が多かった。膨大な数の根付だけではなく、武家屋敷の建物自体も魅力的な京都清宗根付館。入ると目に飛び込んでくる巨大な太鼓が印象的な四天王寺宝物館。絵画織物の美しさとその可能性を感じさせられた西陣織あさぎ美術館。水に浮かぶかのような外観に、あまり見たことの無い樂焼のインスタレーション系の展示が心に残った佐川美術館。機会があればまた訪れて、空間を味わいたい場所ばかりで、新たな場所で新たな物を見て新たに知る体験をした。

京セラ美術館の帝室技芸員展、髙島屋史料館の画工画展、西陣織あさぎ美術館、京都髙島屋の刺繍絵画展と、絵画を基に産み出された織物作品を一気に色々見たのが印象的な月だった。ここまで綺麗に絵画を再現できるのか。織り方の種類で生まれる立体感。照明の光で煌めく刺繍絵画は、ともすれば色褪せて暗く感じてしまう絵画よりも、輝きが感じられた。西陣織あさぎ美術館で西洋絵画の織物絵も見た印象だと、はっきりと描くのではない日本画の描き方と自然の画題が、織物というメディアに合っているのかなと思う。印象派の作品は綺麗に見えたが、《最後の晩餐》は微妙に感じた。

今一番行きたい展覧会は、龍谷大学ミュージアムの博覧展。明治から戦前期にかけての京都での博覧会/展示会と博物館を挙げ、その頃の展示についての想いを探る。大学博物館では、大阪大学博物館の創立20周年記念所蔵品展と、関西大学博物館の河内國平展も気になっている。後者は10月10日までの会期なので行く機会が無いまま終わってしまいそう。

 

 

9月に読んだ本まとめ

 

竹町『スパイ教室』8巻
村田沙耶香『信仰』

清水唯一朗『原敬
筒井清忠編『明治史講義【人物篇】』
原田大介『インクルーシブな国語科教育入門』
ブレイディみかこ『女たちのポリティクス 台頭する世界の女性政治家たち』
ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』
山下裕二『商業美術家の逆襲 もうひとつの日本美術史』
横道誠『イスタンブールで青に溺れる 発達障害者の世界周航記』

 

 

月まとめを書くタイミングの都合上、月末に読んだ本の印象がどうしても大きくなる。9月に最後に読み終えた本は『原敬』。「本格的政党内閣」と言われる内閣が成立するまでにどれだけの道のりがあったかをある程度の深さで学び、その政治家としての在り方も興味深かった。逆に月の頭の方で読んだのは短編集の『信仰』で、こちらの表題作のインパクトも大きかった。原価を常に意識して物事を見てしまい、それを他人にも言ってしまう主人公。ブランド品や高額エステで飾ること自体に意味を見出す友人。その行為は、信仰はうさん臭いカルト商法の絡む宗教とどこが異なるのか。その信仰の果てにあるのは幸せか、幸せがあるのなら信仰は肯定されるのか。最後のカルト宗教の信者たちが熱狂する描写に、そうやって生まれた信仰が宗教として大きくなっていく根っこのような物を感じさせられた。

8月のまとめ

8月に行った展覧会まとめ

 

国立国際美術館 コレクション1遠い場所/近い場所
あべのハルカス近鉄本店 ―ポスト印象派から現代作家まで―西洋絵画巨匠たちの軌跡
あべのハルカス近鉄本店    岡田裕介写真展 Anthology01
大阪歴史博物館    戦争と福祉・ボランティア-田中半治郎の遺品から-
大阪歴史博物館    和菓子、いとおかし―大阪と菓子のこれまでと今―
大阪中之島美術館 みんなのまち 大阪の肖像
大阪中之島美術館 Osaka Directory 1 赤鹿麻耶
アルフォンス・ミュシャ館 ミュシャとおとぎの国の姫君たち
小林美術館 技と心を極める―帝室技芸員の作家たち―
大阪府弥生文化博物館 南関東弥生文化 東からの視点
池上曽根弥生学習館    
阪神梅田本店 岡安真美展~感触~
阪神梅田本店 Portrait In People~岡本ヨシヒロ・後藤範行・花村信子~三人展
阪神梅田本店 TINY ZINEX TINY CRAD SHOW IN HANSHIN~個性が響く繋がる時間~
阪神梅田本店 原翠ユキ個展「夏マツリ」
兵庫県立美術館    関西の80年代
兵庫県立美術館    リ・フレッシャーズ-新収蔵品紹介展
兵庫県立美術館    美術の中のかたち-手で見る造形-
兵庫県立美術館    没後50年 吉原治良の小宇宙ミクロコスモス
BBプラザ美術館    太田三郎展「人と災いとのありよう」
大阪髙島屋 美浪恵利展~うつろい~
大阪髙島屋 齋藤満栄展-一茶と金魚-
大阪髙島屋 若尾誠作陶展
堺市博物館 人とモノが行き交う中世・堺-流通の考古学-

 

 

今月は和泉市大阪府弥生文化博物館に行った日が心に残っている。堺市アルフォンス・ミュシャ館の展示を鑑賞し、JRで南下して高石市の小林美術館を訪れ、さらに南下して弥生文化博物館と池上曽根史跡公園へ。展覧会会期中なら忠岡町の正木美術館へ行きたかったが休館中で、そこまで弥生時代に思い入れも無い状態で訪れることになったが、まっさらな状態だからこそ展示のインパクトが大きかった。当時の暮らしの再現展示。全国の弥生時代資料の豊富なレプリカ。史跡公園で目にした巨大な高床式建物は目に焼きついている。よくある少しの土器の展示だけで暮らしぶりを想像するのは難しいが、資料の物量と建物の再現展示により、教科書や学習マンガのイメージよりは鮮明な弥生時代像を感じさせられた。レプリカを積極的に展示に取り入れていたことや、館長と学芸課メンバーの写真付きコメントをロビーに貼っていたのも印象的。

大阪府の南西部では、今回行きそびれた正木美術館のほか、貝塚市の自然遊学館に善兵衛ランド、先月リニューアルオープンした大正期建築の田尻歴史館が気になる。大阪では無いが、アクセス的には近しい和歌山大学の博物館も行ってみたい。

 

 

8月に読んだ本まとめ

 

河﨑秋子『土に贖う』
窪美澄『夜に星を放つ』
小砂川チト『家庭用安心坑夫』
セラハッティン・デミルタシュ『セヘルが見なかった夜明け』
寺地はるな『タイムマシンに乗れないぼくたち』
年森瑛『N/A』
林真理子『奇跡』
結城弘『二十世紀電氣目録』
クラリッセ・リスペクトル『星の時』

倉本一宏、亀田俊和、川戸貴史、千田嘉博、長南政義、手嶋泰伸『新説戦乱の日本史』
品田悦一『万葉ポピュリズムを斬る』
圓井義典『「現代写真」の系譜 写真家たちの肉声から辿る』
森岡督行『800日間銀座一周』

 

 

今月は小説が多めか。「かけがえのない他人」という関係性を望む女子高生を描いた『N/A』が一番印象的だった。カテゴリー化の中で捉えて捉えられて生きていく中で人とどう関わり、言葉をどうするのか、どうしていきたいのか。当事者というカテゴリーで判断されない、ありのままの存在として受け入れられる自分。「友達」という枠として特別な言葉を出せなかった主人公が最後に辿り着けた言葉に、単純かもしれないが大切な答えを感じさせられた。

7月のまとめ

7月に行った展覧会まとめ

 

堺刃物ミュージアム    
Gallery TOBA 鳥羽美花展「雨季の余白~拡散する蒼~」
ギャルリーためなが大阪    智内兄助展
なんばマルイ 成田美名子原画展
なんばマルイ まちカドまぞく展~マンガもアニメもお祝いまぞくです~
大丸京都店 入魂の芸術 日本刀展
千總ギャラリー    千總の屏風祭―明治の屏風祭ふたたび
千總ギャラリー    伊庭靖子個展「外に内に染む」
大阪商業大学商業史博物館 秘蔵の大阪画壇展第2弾
司馬遼太郎記念館 色紙と自筆原稿でみる『司馬遼太郎が考えたこと』
atmos心斎橋店 atmos×絵師100人展 scene2
上方浮世絵館 芝居の小道具 扇
髙島屋史料館 山元春挙高島屋

 

 

同じサークルの人と祇園祭前祭に行った。街を歩き回って山鉾を見ながら、屏風祭を堪能。新しい建物が見える中でも、少し路地に入って行くと、絢爛な美術品を所蔵する古い家が残っている。展示空間として整備された箱で見る美術品ではなく、家の中に飾られる形で、かつて在ったかもしれない身近な美術風景を目にできたのが非常に印象的だった。大人の身長ほどの直径の車輪を持ち、スケールの大きさだけでも圧倒される巨大な山鉾にもびっくり。予想していたよりも数段大きかった。帰りの駅に辿り着くことすら困難な混み具合には閉口したが、歴史と文化が続いている京都の街を感じる楽しい一日だった。

来月以降に行きたい展示としては、大阪中之島美術館の岡本太郎展が行きやすさとしても一番か。兵庫県立美術館の関西の80年代展、西宮市大谷記念美術館のイタリア・ボローニャ国際絵本原画展和歌山県立近代美術館のコレクション展も行きたい。今日行った髙島屋史料館でチラシを入手した、9月から京都髙島屋で開催される「刺繍絵画の世界展」も気になる。

 

 

7月に読んだ本まとめ

 

イ・ヒヨン『ペイント』
永井みみ『ミシンと金魚』
二月公『声優ラジオのウラオモテ』7巻
アネ・カトリーネ・ボーマン『余生と厭世』

木村幹『韓国愛憎』
西野嘉憲『熊を撃つ』
白水社編集部編『「その他の外国文学」の翻訳者』

 

 

今月は色々あってあまり本を読めず。子どもが親を選択できるようになった世界を描いた『ペイント』と、認知症の高齢女性の一人称で綴られる『ミシンと金魚』が心に残る。特に後者は、認知症のおばあさんの語りから老いてしまうことの生々しさを強く感じ、老いへの抵抗感から手を止めようとしたが読み切らされてしまう、そんな凄い作品だった。